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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章
「あら、素敵! そうだ、ヴィヴィ、今日一緒にお風呂に入りましょ?」
「え……? あ、う、うん」
特に異論は無く、頷いたヴィヴィだったが、
「おお、それは良いねえ。じゃあ、その後で、親子3人で川の字になって寝ようか!」
「え゛……」
続いた父の提案には、若干異論を唱えたくもなった。
(えっと……、私もう、21歳なんですけれども……?)
「まあっ ナイス・アイデアだわ、グレコリー♡」
両手を叩いて喜ぶ母と、妻と娘を交互に見つめてうっとり微笑む父。
「ああ、楽しみだなあ。2人とも早く帰っておいで?」
「……はは……」
乾いた笑いを零したヴィヴィは、周りのコーチ達が苦笑を浮かべ、
更には笑いを噛み殺している者までいる事に、気付いていた。
「ふふ、仲良し親子で羨ましいわ。じゃあ、お父様、お母様、泡盛を買ってきますね」
コーチ達にも挨拶した瞳子が、辞去し。
「会うの3度目だけど、いつ見ても綺麗な人だな?」
斜め前に座るサブコーチのその言葉に、
「本当に……。 “自慢の義姉” です……」
ヴィヴィは小さな顔に笑みを張り付けながら、静かに自分の席へと座り直した。
Skypeで英国のショーンコーチからの指導を仰ぎつつ、ジャンプを中心に練習に励んだヴィヴィ。
本当はもう少し残ってやりたかったが、母に引っ張って屋敷に連れ帰られてしまった。
「じゃあ、ヴィヴィ。荷物片付いたら、おやすみセット持って、2階にいらっしゃい?」
母の誘いに素直に頷き、3階の私室へと戻れば。
「……お兄、ちゃん……」
3階の真ん中に位置する、白を基調とした部屋にいた、その人の名を呼んだ。
「おかえり」
「……ただいま……」
白革のソファーに腰かけた匠海に紅茶を淹れていた五十嵐も、ヴィヴィに挨拶をしてくる。
兄の執事である彼が、1週間の滞在中、ヴィヴィの世話をしてくれる事になっていた。
五十嵐に荷物の大部分を預け、自分はスケート靴の手入れをしようと、ソファーの隅っこに腰を下ろせば、
「お前なあ、電話くらい出ろよ?」
スーツ姿の兄から、恨めしそうな声が飛んで来た。