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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章     

 癒しの場であるバスルームで、ヴィヴィは何故か凹んでいた。

 理由①

 母の胸の豊かさが、遺伝しなかった事実を再確認したから

 理由②

 頂いたフラワーバスが素敵過ぎて、どうやっても頭の中に瞳子が現れるから

 理由③

 そろそろ匠海が、ここから2駅しか離れていない、白金台の屋敷、に――

「ヴィヴィ、ちょっと聞いてるぅ~~?」

「あ、うん。聞いてる聞いてる」

 お風呂ではジュリアンばかり べらべら喋っていて、ヴィヴィは相槌ばかりだった。

「本当にいい香りねえ? 癒されるわあ♡」

「……ダッド、後で入るのかな?」

 大して興味があった訳でも無いが、呟いたヴィヴィに、

「入るんじゃない? あら、写メ取りたいわねえ♡」

 グレコリーの逞しい身体が、花弁まみれになるのを想像したらしいジュリアン。

 にやあと嗤った顔が何故か、血の繋がっていない匠海と瓜二つで。

「……変態……」

 思わずそう突っ込んでしまったヴィヴィは、ぽかりと母に叩かれてしまった。

 金色の長い髪をシャンプーする間にさえ、5弁の星型の夜来香からは、強い芳香が漂ってきて。

 小さな頭の中には、ベージュのサマースーツに包まれた、豊かな胸にくびれた腰が、現れては消えて、を繰り返していた。

 髪を丁寧にすすいだのち、バスタブで緑色の薔薇の花を掻き集めて楽しんでいるジュリアンを見やる。

「……結婚って、いいもの……?」

「どしたの、いきなり?」

 きょとんとする母に、ヴィヴィは微かに首を傾け「なんとなく……」と言葉を濁す。

「ふうん? そりゃあ、結婚はいいわよ~。私見てれば解るでしょう? 素敵な旦那様♡ に、イケメンで優秀な長男♡ 寡黙だけど良い子の次男♡ ……ほんっっっとに手の掛かる、末娘☠……」

 最後、げんなりした表情を浮かべた母に、「どうせえ(-_-)」とヴィヴィは拗ねた。

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