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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章
「ちょっと、分けてくれないかな?」
昨夜から、ずっと、
濃厚な馨りが、全身に纏わり付き、
何処までも自分を、追い駆けてくるようで。
「ん? もちろん、いいよ~。じゃあ、付けてあげようね♡」
ほっぺから指を退けた舞が、一旦離れ。
戻って来たその手には、シンプルな香水の瓶があった。
「ふわぁ……、いい香り……。ミモザ?」
あまり香り過ぎないようにと、体温で暖まりにくい耳の隅に付けて貰えば。
生花のミモザの香りが、漂い始めた。
「うん。実は……春にプレゼントしてくれたの」
「達樹君?」
舞の綺麗な顔に浮かぶ幸せの色に、ヴィヴィはすぐに解かった。
彼女のペアのパートナー 兼 恋人である、成田 達樹は、双子にとっても幼馴染のお兄さん だ。
「うん。まあ、ミモザって春のお花だから、そろそろ夏っぽい香水のが、良いのかもしれないけどね?」
少し名残惜しそうな舞に、ヴィヴィは首を振る。
「でもこのミモザ、爽やかだよ? きゅうりとかメロンとか……、瑞々しいというか水っぽい感じ、夏にもいいと思う」
開きかけのミモザは、青臭さとほろ苦さが同居する、粉っぽさの混じった香り。
満開になると、ほっこりしたパウダリー感が勝り、
同時に、蜜の甘みと干し草の様なウッディー感がほんのりと加わってくる。
この香水は青臭い感じが強くて、ヴィヴィも好みの香りだった。
「そう? じゃあ、夏もつけよう♡」
「えへへ。2人の幸せのお裾分け、して貰っちゃった♡」
ほやんと顔を緩めたヴィヴィに、
「やだもう、ヴィヴィったら」
恥ずかしそうな舞が、ぺちりと背を叩いてくる。
―――――――
※ミモザ:春先に咲き乱れる、黄色のポンポンが可愛いお花