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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章
『えへへ。じゃあ、双子が2人の ♡愛のキューピットさん♡ でもいい?』
『キューピットって……。お前ら、人の恋路より、自分達の恋路を心配しろよ?』
達樹は照れ隠しか、ややぶっきらぼうに呟いていたっけ。
『……~~っ “自分の恋路” が無いから、人の恋路を応援して、幸せのお裾分けを頂いているんじゃないかあぁっ』
悔しげに喚いたヴィヴィと、うんうん頷いて同意していた、17歳の時のクリス。
懐かしい想い出が ふと過ぎり、
(クリスに、会いたいな……)
ヴィヴィはまたもや、ホームシックに罹ってしまった。
「うん、ちょっと顔色良くなったね?」
ヴィヴィの顔を覗き込みながら、にっこりする舞に、
(あ……、お姉ちゃんって、こんな感じなのかな……?)
5歳上の舞は、昔からこうやって自分を気に掛け、可愛がってくれていた。
「ふふ、お揃いだね?」
先程まで囚われていた夜来香の濃厚な香りが、今は見る影も無くて。
同じくにっこりしたヴィヴィは、舞にお礼を言い、連れだって更衣室を後にした。
お姉ちゃん――。
本当の義姉は、今やすぐ傍にいて。
自分を物凄く可愛がり、慕ってくれている。
フラワーバスのプレゼントだって、
悲惨な目にあい、浮上出来ない義妹を想い、
忙しい身ながら、造ってくれた筈で。
フィットネスルームで念入りにストレッチをしたヴィヴィは、iPadを手にリンクアリーナへと向かう。
匠海という存在を介しなければ、
ヴィヴィは瞳子に凄く懐いたと思う。
華道を習ったり、一緒にお出掛けしたり。
それくらい、女性として憧れられる素質を色濃く持つ、素敵な義姉。
だから、
瞳子には本妻として、匠海に一心に愛される価値があり、
そして、
自分、は――。
「…………しゃっ」
スケート靴をしっかりと履いたヴィヴィは、立ち上がり。
そんな男勝りな気合の声と共に、リンクに入る。
氷の上では俗世間の事はきっぱり忘れ、スケートだけに集中する。
そうしなければ、自分だけでなく周りの皆に怪我を負わせてしまう危険があるし、
何よりも、
“自分” が、死んでしまうから――