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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章
「篠宮代表と12時に、アポイントがあるのですが」
表参道にそびえ立つ、篠宮證券の本社ビル。
吹き抜けが気持ちいい受付で、ヴィヴィは訪問の要件を伝えた。
何故か、キリっ という効果音が似合う、凛々しさで。
「CEOから伺っております。どうぞあちらのエレベーターから、カードをお使いになりお上がり下さい」
受付嬢からカードを受け取ったヴィヴィは、胸を張ってエレベーターへと歩を進める。
高く結い上げたポニーテールも、本当に馬の尻尾の様に、ふりんふりんと小気味良く揺れていた。
(今回は、噛みも どもりも しなかったぞ~~っ!!)
そう、胸の中でガッツポーズをしながら。
最上階の50階にあるプレジデントフロアに到着すれば、男性秘書がヴィヴィを待っていてくれて。
すぐに通されたプレジデントルームでは、父・グレコリーがちょうど電話中だったらしく。
娘ににっこりしながら、ソファーを指さしていた。
だだっ広いフロアに据えられた革のソファーに腰を下ろし、きょろきょろしていると。
「お待たせ、ヴィヴィ。ああ、今日も可愛いねえ」
ライトグレーのフレンチスリーブと、ショートパンツのセットアップを纏った娘に、父は目元を緩める。
オフィスに来るのだから、なるべくきちっと見える服をと思い、上質な素材のセットアップにしたのに。
どうやら父親の目には、娘がどんな格好をしようとも “可愛い” と映るらしい。
「はは……。ダッドもカッコいいよ」
ピンストライプのネイビースーツを、ノーネクタイでサラリと着こなすさまは、まるでハリウッド俳優のようだ。
「さて、Bambiちゃん。ランチは何か食べたいものはあるかな?」
「ん~~、ダッドのお勧めのもので」
手を引かれてソファーから立ち上がったヴィヴィ。
連れ立ってエレベーターで地上まで降りて行く――と思えば、
何故か途中の階で、グレコリーが箱を止めてしまった。
「ダッド?」
ポニーテールの頭をぴょこっと上げ、父を呼べば、
「ちょっと、寄り道」
そう答えたグレコリーは、にやあと悪い微笑を湛えていた。