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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章
8月8日(火)――日本滞在3日目。
昨夜、松濤のリンクに泊まり込んだヴィヴィは、また6時前から早朝練習を熟し。
10時に上がった頃には、さすがに疲労がピークに達していた。
速攻屋敷に戻り、ベッドで熟睡すれば、元通り元気になり。
少し遅めの昼食を採った後は私室のライブラリーで、五十嵐から種々の報告を受けていた。
「こちらの書類をご覧下さい。㈱シチズン様より、時計のオークション落札結果の報告です」
「へえ……。前より高い値段、付いた……」
ヴィヴィはデスクに置かれた書面を摘まみ上げると、落札金額をしげしげと見つめる。
GPファイナル2022(使用済)= 110万円
世界フィギュア2023(使用済)= 120万円
四大陸選手権2023(未使用)= 50万円
1982年以降、㈱シチズンは世界大会へ協賛をしてきた。
その際に副賞として、上位3選手に時計を贈ってくれるのだが。
14歳の頃から負け無しだったヴィヴィの手元には、大量の腕時計が保管されていた。
20歳の誕生日に渡英する前。
執事・朝比奈の助言もあり、それらの時計をオークションに出品出来ないかと、企業と交渉していた。
その結果、当時13個のあった腕時計は、(株)シチズンとヴィヴィの連名でオークションを開催し。
売上金1,020万円を、児童養護施設へと寄付していた。
加えて、
ヴィヴィを扱った関連本、CD、DVD等の印税収入の半額、
縫いぐるみやその他のグッズ販売収益の半額。
それらを毎年集計し、寄付していた。
(元値が30万円くらいでしょ? わぉ……、4倍くらいに値が張ってる)
ヴィヴィが1年間、実際に着用していた事と、大会の刻印がある事でプレミアが付くのだそうだ。
「じゃあ、落札のお礼にメッセージを書こう~」
機嫌良くデスクの引き出しから、メッセージカードを取り出したヴィヴィ。
「ふんふんふ~~ん♪」と、適当過ぎる鼻歌を奏でながら書き上げた3枚のカードを、五十嵐に手渡せば。
「……? この黒いのは、書き損じですか?」
執事が主へとカードを向け、指で示してくる。