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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章
「……ナマコの絵……です……」
黒くうねうねした物体には、ちゃんと「ありがとね♡」と吹き出しが書いてあるのに。
「絵が下手糞すぎる」と暗に指摘されたヴィヴィは、しょぼんと細い肩を落とした。
「も、申し訳ございません」
珍しくどもった五十嵐だったが、そりゃあ主がカードにナマコの絵を書くとは、思い至らぬのも当然で。
「素晴らしい取り組みですね。お嬢様の御年で社会貢献に積極的でいらっしゃるとは」
何事も無かったかの様に、話を変えた執事だった。
「……そんな、素晴らしい事、してる訳じゃ無いの。それに、四大陸……。金だったらもっと値段、高くなったろうしね」
くしゃりと笑ったヴィヴィの脳裏には、2つの想いがあった。
1つは、この寄付をする行為は、どこか罪滅ぼしの色があること。
1つは、四大陸で良い結果を残せなかった、不甲斐無い自分への懺悔。
「2位でも素晴らしい結果ですよ。ちなみに余談ですが……。昨シーズンは毎試合、朝比奈がテレビの前で「ジャンプが決まります様に」と、お祈りを捧げておりました」
すかさずフォローを入れてくれた兄の執事に、ヴィヴィはふっと表情を改め、白い歯を覗かせ笑った。
「あははっ あんまり朝比奈に心配ばかり掛けさせたら、老けさせちゃうから、気を付けよう~~」
1時間 楽器に触れたヴィヴィは、最近は週に1回くらいしか更新していない、双子のHPへ日記を投稿し。
15:00からはまた、松濤のリンクで陸トレと氷上での自主練に励んだのだった。