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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章
「ああ、生ビ――」
「ふぎゃぁあああああああ~~っ!?」
匠海の言葉を遮ったのは、ヴィヴィが腹から絞り出した大絶叫だった。
「ヴィヴィ……っ!? ど、どうした?」
驚いて こちらに視線を寄越す達樹に、
「な、ななな――っ 何でも無いぃ~~っ!!」
どもりまくって全然 “何でも無くない” 様子のヴィヴィは、苦し紛れにすっとぼける。
(なっ な、なななな、ナマって……っ 絶対、絶対っ そういう意味で言ったでしょうっっ!?)
限界まで剥いた灰色の瞳でガンを飛ばす妹にも、匠海は知らんぷりで。
「ていうか、ヴィヴィに生ビール? 似合わね~~」
けらけら笑った達樹に、舞もにっこり微笑む。
「確かに。可愛いカクテルとかの方が、似合いそう」
しかし、そんな楽しげな雑談は、長くは続かなかった。
「ちょっと、あんた達っ!! リンクで騒ぐな、五月蠅いわぁ~~っ!!!」
氷の上では鬼――のジュリアンが、頭から湯気でも出ていそうな形相で、
特に絶叫しまくった娘に対し、大層おかんむりのご様子だった。
「ひぃ~~っ すみませんすみませんすみませんっ」
腰を90度に折り平謝りするヴィヴィに、舞と達樹も同様に謝罪する。
――匠海はいつも通り、面白そうに笑っているだけだったが。
「マム、ヴィヴィをディナーに連れて行きたいんだけど?」
良く通る声で、母に連れ出す許可を取る兄に、
「ええ、良いわよ。ってか、この子、昨晩ここに泊まって練習してたらしくて。とっととご飯食べさせて、ベッドに寝かし付けて頂戴!」
母のその言い様は、21歳の娘に対してというよりは、7歳児くらいの子供に対するもので。
「了解。ほら、ヴィヴィ。元コーチ 兼 保護者のお許しを得たぞ?」
昨夜の妹同様「してやったり」とほくそ笑む匠海の表情に、
(あ゛~~っ もう……っっ!!)
ヴィヴィの中で、堪忍袋の緒がブチっと切れた。