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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章     

「分かったっ、行くよっ! 行けばいいんでしょっっ!?」

 両拳を力一杯 握り締め、けれど、先程よりは声量を落としたヴィヴィが降参すれば、

「ああ。たくさん生ビール飲んで酔い潰れても、ちゃんとおぶって帰ってやるから、心配するな?」

 どこまでも “良い兄” を演じる匠海は、満面の笑みを浮かべ “手の掛かる妹” を見つめていた。

「~~~っっ」

(ナマコ攻撃の仕返しにしては常識外れでひど過ぎないかこのやろお)







 五十嵐から預かったという着替えを押し付けられたヴィヴィは、ぷんすかしながらフィットネスルームへと向かったのだが。

「ヴィ~ヴィ~~」

 ドアを開けて覗き込んで来たのは、先ほどまで一緒に練習していた成田 達樹だった。

「あ、どうしたの?」

「うん、いや、な……」

 何故か言いにくそうに、茶色の視線を彷徨わす達樹に、

「ん?」

 そう短く先を促せば、

「あ~~、クリスが、心配してたぞ?」

 まさかの言葉を続けた彼に、ヴィヴィは「え……?」と首を傾げた。

「これ、秘密な……? 今回、ヴィヴィが帰国するって決まった時、クリスから「妹が日本にいる1週間、何か悩んでたりしたら、力になってあげて欲しい」って連絡が来たんだ」

「………………」

 わしゃわしゃと黒髪を掻きながら、クリスとのやり取りを打ち明ける達樹に、ヴィヴィは言葉を失ってしまった。

(……クリス……)

「もちろん、男の俺には言いにくい事はあるだろうし。もし何かあったら、舞に相談しろよ?」

「……う、ん……」

「じゃあな?」

 そう言って出て行こうとする達樹に、ヴィヴィはストレッチマットに座ったまま口を開く。

「あ、ありがとうっ」

 双子の兄の心遣いにやや放心しながらも、幼馴染に礼を言ったヴィヴィに、

「はは、まだ何もしてないって」

 達樹はそう笑い飛ばして、今度こそフィットネスルームを出て行ったのだった。





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