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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章
更衣室へ戻り、五十嵐が用意してくれた着替えのバックを開け、
ヴィヴィは文字通り固まった。
バッグの一番上に置かれていたのが、どこからどう見ても購入された物だったのだ。
迷わずスマホを取り出したヴィヴィは、速攻 匠海に電話を掛けた。
「どうしたの、この洋服……?」
開口一番そう尋ねたヴィヴィの視線の先には、某ブランドの小さなショッパー(紙袋)があった。
『ん? ああ、プレゼント』
電話口の兄の声が、笑んでいる事に気付き、
「……――っ い、いらないっ」
咄嗟に拒絶の声が漏れた。
『ヴィヴィ……?』
「贈り物なんてっ もう金輪際、受け取りたくないっ!」
誰もいない更衣室に響いたのは、悲痛な声だった。
匠海からの贈り物。
それも、形として後に残るもの。
沢山の幸せな想い出が沁み込んだそれらが、
19歳の時の自分を、どんなに苦しめたことか――。
『……だが、他に服、持って来ていないし。屋敷に着替えに戻ったら、時間が掛かるだろう?』
「………………」
返ってきた兄の言葉にも、ヴィヴィは頑なだった。
確かに、自分が持って来た着替えは、ポロシャツのワンピで。
けれど、スポーティーなそれで入れるお店だってある筈だ。
例えば、ファーストフード店、とか――?
(いや、それだと、ここのカフェテリアと、大差無いけど……)
『ヴィヴィ?』
沈黙してしまった妹に、兄の気遣わしげな声が届き、
「……どんなお店……、行くの……?」
匠海に限っては絶対に無いと思うが、ファミレス等だったら、ポロワンピでも行けるかもしれない。
『ドレスコードがある、日本料理店』
きっぱりとした返事に、水色のウェアに包まれた肩が落ちる。
という事は、もう予約も取ってあって。
もちろんポロワンピにスニーカーなんかで行った日には、店頭で追い返されるのがオチ。
(でも……。もう、あんな思い……したく、ない……)