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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章     

 更に、灰色の瞳を大きくさせたものは、

「こ、これは……っ 噂に聞く、ヌ、ヌー○ラというもの、では……っ!?」

 小さなパッケージのそれは、乳房に張り付けるブラジャーで。

 実のところ、今までベアトップ等を何度か着ておきながら、ヴィヴィは使った事が無かった。

 何せ、ぺちゃぱいの自分には、縁遠いものだと勝手に決めつけていたから。

「………………っ」

 ごくり。

 何故か生唾を飲み込んだヴィヴィは、纏っていたウェアを高速で脱ぎ捨て。

 目にも留まらぬ早業で、投げる手裏剣――

 じゃなかった。

 シャワーを浴びて舞い戻って来た。

 洗った髪をタオルで巻き上げたまま、ヌーブ○説明書を熟読すれば、


<つけ方のポイント>

①ボリュームのある胸の方

②サイドをスッキリさせたい方

③谷間を強調したい方


 哀しいかな、迷わず③を選んだヴィヴィは説明書きに従い、真っ白で膨らみの貧相な胸に貼り付け、フロントホックを掛け。

「ほぇ~~~♡」

 腑抜けた声を上げたその顔には、これ以上ない恍惚の表情が浮かんでいた。

「た、谷間が……っ 人生初の谷間がぁ~~~っ!!」

 胸の前で両手をワキワキさせながら、感情を爆発させたヴィヴィ。

 しかもパッケージを見直せば、その商品名は、

 “○ーブラ・エアライト・ヴィクトリア”。

 何と何と、自分と同じ名前が付いているではないか!

(誰かにっ 誰かに自慢したい~~っ!!)

 タオルを巻いた頭できょろきょろ辺りを見回すが、更衣室にはまだ自分しかいなくて。

 しかもリンクなので、見せられる相手といえば、ジュリアン 若しくは 舞をはじめとしたリンクメイト、しかおらず。

(う~~ん。マムに見せたら、取り敢えず、鼻で笑われて終わりでしょう? 

 あ~~、舞ちゃんなら、絶対に一緒に谷間を喜んでくれる筈なのにぃ~~っ!!)

 小花レースと、適度に寄ったギャザーのシフォンが素敵なそれは、黒色で。

 しばらく鏡に映った自分にうっとりしていたヴィヴィ。

 しかし、随分と兄を待たせている事に気付き、慌てて髪を乾かし始め。

 そして、

 単純なヴィヴィは、匠海に対して抱いていたイライラなんて、すっかり遠くへ追いやっていたのだった。





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