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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章     

「ああ、ヴィヴィは本当に、スタイルいいなあ」

 準備を終えてカフェテリアへと向かえば、そこでノートPCを弄っていた匠海は、開口一番 そう妹を褒めた。

「そ、そんなこと……」

 ノースリーブワンピのミニの裾を、両手で庇うヴィヴィに、

「いやもう、雑誌から飛び出して来たみたいだ。ランウェイ歩いていても、おかしくないレベル」

 頭の先から爪先まで、しげしげ見つめてくる匠海に、薄紅色の頬にさっと朱が走った。

「言い過ぎ……っ」

 幾ら自分が華奢に見える(実際は筋肉ある)と言っても、9頭身の匠海に「モデルみたい」と言われれば、何だか嫌味にも聞こえるのは気のせいか?

「はは。照れて可愛いな」

 冷やかしながらPCを鞄に直した匠海は、「じゃあ行くか」とヴィヴィを促した、が、

「お、お兄ちゃん、先行って!」

 どうしても兄の前を歩きたくないヴィヴィは、両手を差し出して「どうぞどうぞ」とジェスチャーする。

 妹の大荷物を受け取った匠海は、言われるがまま先を歩き始めたが、

 その後ろを着いて来る妹が、どこか挙動不審で。

 なおかつ、△に開いた腰を見られない為に、若干 壁伝いのカニ歩き(横歩き)になっているのに気付き、

「あははっ お前は本当に面白いなあ?」

 大きめの口で豪快に笑う匠海を、ヴィヴィは恨めしそうに睨み返したのだった。

「……てか、もう……。お腹空いて、死にそう……(- -|||)」







 待たせていたらしい篠宮の運転手の運転で辿り着いたのは、六本木3丁目だった。

 周りをシリア大使館、ロシア大使館、小中高校に囲まれた閑静なそこ。

 2階建てマンションの地下にあった日本料理店は、下手をしたら見逃しそうな程の佇まいだった。

 地下へ下りる階段で、兄はヒールの黒サンダルを履いた妹に手を差し伸べてきたが、ヴィヴィは軽く首を振って手すりを使った。

「個室を取ってあるけれど?」

 そうヴィヴィに確認してきた匠海の意図は、2人きりの閉ざされた空間に、妹が当惑すると解っているからか。

「……出来れば、カウンターで……」

 10名がゆったり間隔を取って座れる広いカウンターに視線をやった妹に、兄は簡単に応じてくれた。

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