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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章
「生ビール、あるぞ?」
飲み物を頼む際、匠海のそのからかいを完全に無視してやったヴィヴィ。
白木に白漆喰の壁、和紙といった落ち着いた和の内装。
目の前で見る事の出来る、熟練の職人の技。
一つひとつ凝った盛り付けは勿論、各地の陶器や漆器も目にも愉しませてくれ。
そして、味は言う事無し。
ホテルの総括料理長を歴任し、熟練の技で客を魅了する料理長は、
有機・無農薬の野菜や漁港直送の魚介類を中心に使用した、素材感にあふれた料理を振る舞ってくれた。
(妹が一方的に)ギスギスした2人の距離感も、料理長や職人との会話も交え、かつ 滋味深い料理で舌も滑らかになり。
あっという間に2時間経って、ヴィヴィにとっては大変有意義なディナーであった。
一方の匠海はといえば、
「はぁ……食べ過ぎ、苦しい」
紺のサマージャケットの上から、腹を擦っていて。
「残せば良かったのに……」
冷静に突っ込むヴィヴィだったが、
「いや……。ヴィヴィが『食べきれ無いから、あげる』って言ったから、頑張って食べたんじゃないか」
少々恨めしそうに見返してくる匠海に、妹は金の頭の中でぺろっと舌を出した。
和牛ステーキやら、天麩羅やら。
確かにヴィヴィは、匠海に大量に押し付けた記憶がある。
(しょうがないじゃん。幾ら懐石料理でヘルシーな食材が多かったとは言え、カロリーコントロールしないと、さ……)
迎えに来てくれた運転手の車で、松濤の屋敷へ戻ったのが23:00。
てっきりそのまま帰ると思っていた匠海は、何故か妹と一緒に3階へと上がって来て。
「ちょっと……」
「ん?」
我が物顔で妹の私室のリビングで寛ぐ兄に、ヴィヴィが表情を曇らせる。
「お兄ちゃん……、ちゃんと、匠斗と会ってる……?」
ヴィヴィを含め篠宮の3兄妹は、多忙な両親とは中々一緒に居られなかった。
もちろん両親は出来る限り仕事を抜け出し、若しくは早めに切り上げ、子供達と過ごせるように配慮はしてくれていたが。
それでも、3兄妹と使用人で過ごした時間のほうが長かった。