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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章
ヴィヴィはそれでも、寂しくはなかった。
匠海もクリスもいてくれたし、保父さんのような朝比奈もいてくれたから。
リンクに行けば母がいて、コーチとしてだが自分達と接してくれた。
けれど、匠斗はどうだろう――?
メイドが面倒を見ているとはいえ、両親とも多忙で1人っ子。
まだ0歳児とは言え、自分の甥は寂しいのではないだろうか?
「ヴィヴィは、優しいな」
「……はあ……?」
まさかの兄の返事に、ヴィヴィは胡散臭そうな反応を返した。
「何でそこで怒る? 大丈夫。匠斗とは朝食を毎日一緒に摂っているし、今夜もリンクに行く前に、会って来たよ」
困った様に眉尻を下げた兄の答えに、ヴィヴィは少しだけ安堵を覚えた。
「……そう……」
匠海は以前、「双子が産まれてくるまで、1人で寂しかった」と言っていた。
同じ思いを我が子にさせる――そこまで鬼畜な父親には、なっていないらしい。
「ヴィヴィ。お前、何でアルコール飲まなかった?」
「え……? あ、別に……」
いきなり話題を変えた兄に、妹は若干 戸惑いつつ返したが。
「ふうん? じゃあ、晩酌付き合って?」
控えていた五十嵐を振り返ろうとする匠海を、
「はぁあ!? ていうかもう、家に帰りなよっ」
ヴィヴィは咄嗟に、結構きつめの声で止める。
(だからもうっ 何で私が……。この私がっ
元恋人に「妻の元に帰れ」なんて、言わなきゃなんない訳――!?)
匠海に幸せになって貰いたい。
その気持ちは、あの時から変わっていない。
けれど、だからと言って、
何で “捨てられた自分” が、元恋人のその夫婦間を取り持つような真似を、させられねばならない――?
(自分ちで、幾らでも呑めばいいでしょっ! それこそ匠斗の寝顔を “酒のあて” にしてさあ~~っ)
内心憤慨しまくりのヴィヴィに、次に掛けられた匠海の言葉は、何故かフランス語だった。
「また怒らせてしまった……。じゃあ、服、返してくれるか?」
成程、五十嵐に聞かれたくない会話の類だったらしく。
察した執事も、静かにリビングを後にした。