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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章     

(まったくっ 干しナマコを粉末にして、常に持ち歩こうかな?)

 悪霊退散 ならぬ 宇宙人退散グッズを考案したヴィヴィは、本当に料理長に頼みに行こうと、階下に降りたが。

 如何せん、もう夜中の23:30で。

 使用人をこんな時間まで(しかも阿呆みたいな用件で)付き合わせるのも悪い、と思い直し。

 しかし、この憤り(?)をどこかにぶつけて発散したくて堪らなく。

 結局 防音室へ向かったヴィヴィは、漆黒のグランドピアノに向かい。

 半ばやけくそ気味に、ベートーベン 交響曲 第5番『運命』第1楽章 を弾きまくったのだった。






 30分ピアノと格闘したヴィヴィは、若干の憂さ晴らしも出来。

 降りてきた時よりかは軽い足取りで、3階へと上がった。

 風呂で一日の疲れを癒そうと、ぬるめの湯に全身を沈め。

 冷たいアイピローを目蓋の上に乗せれば、ちょっと、よだれが垂れそうなほど気持ち良い。

 しばし、そのまま呆けていたヴィヴィ。

 けれど、

『ヴィクトリアの……ヴィヴィの香りが、付いてるのが欲しい』

 先程 匠海の寄越した戯言が、小さな頭を過ぎり。

 細く高い鼻から、深く長い嘆息が漏れる。

 一体、あんな物を手にしてどうするというのだろうか?

 そんな考えない方が良いに決まっている事に、疑問を持ち始めたヴィヴィ。

(もし……、昔の私が、お兄ちゃんの着ていた服を貰えたら……?)

 そんなの、決まっている。

 一緒に眠れない日はその服を抱きしめて、若しくは、羽織って。

 まるで兄と一緒に眠りに就いている錯覚を覚えながら、幸せな眠りに就くだろう。


――――――
※ベートーベン 交響曲 第5番『運命』
 ♪ジャジャジャジャ~~ンっ ジャジャジャジャ~~ンっ♪ で始まる超有名曲  
 リストがピアノ用に編曲したんだって~
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