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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章     

 一瞬、昔の自分に戻ったのが悪かった。



『……っ ……リアっ ぁ……っ』

『ああっ ヴィクト、リア……っ 愛して……るっ』


 
 脳裏に過ぎったのは、ある日の兄の自慰の声。

 シャワーの降り注ぐ音に紛れ、微かに届いた兄の声は、明確に自分の名を刻んでいた。

 鞭を与え続けられ、身も心も振り回され、自分は兄だけの人形になろうと決意したが。

 そんな自分に「愛している」と告白した匠海。

 何もかも信じられなくなり兄を拒んだ妹に、あの人は言ったのだ。



『お前が良いと言うまで、絶対に触れない』



 だから、あの手この手で匠海の決意を試した結果、

 兄は自分の手で、己を慰めていたのだ。

「……――っ」

 まさか。

 さすがにあのワンピを使って、そんな事をするとは思えないが。

『ヴィクトリアの……ヴィヴィの香りが、付いてるのが欲しい』

 そう口にした時の、匠海の瞳の熱さが脳裏を過ぎり。

 思わずぷるぷると金の頭を振ったヴィヴィ。

 ある訳無い。

 ある訳が無い。 

 匠海は他の女と結婚したのだ。

 当然まだ新婚気分抜けやらず、寝室は一緒の筈で。

 それに、あの服。

 妻に見つかったら、100%誤解を生むのではないか?

 いくら瞳子が素晴らしい人間だとしても、男女間の嫉妬くらいは覚えるだろう。

 今更ながら、とんでもない事を仕出かしてしまった気がして。

 焦って白いバスタブから立ち上がろうとしたヴィヴィ。

 だが、その身体は、微かに腰を浮かせただけで、数秒後にはまたすとんと湯の中に落ちた。

 戸惑いを浮かべていた小さな顔が、徐々に落ち着きを取り戻し、無表情に近いそれになっていく。

「……馬鹿じゃないの……?」

 バスルームに響く、掠れた低い声音。

 それは戒めだった。

 匠海に対して。

 そして、

 自分に対しても。

 冷静になって考えてみろ。

 匠海があの服を、自宅に持ち帰る筈が無いであろう?

 どうせその辺のコンビニにでも寄って、ゴミ箱に捨てるか。

 運転手に命じ、処分させるに決まっている。

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