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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章
15時からは、柿田トレーナーのメニュー通りに、フィットネスルームで身体を造り。
18時からは、ディナーを挟みながら氷上練習へと切り替え。
その中でも1時間半は、Skypeを通してみっちり、ショーン・ニックスの指導も受けた。
特に今日はステップに根を詰めて練習したので、脚の疲労が半端無くて。
大腿四頭筋、ハムストリングス、内転筋、腸脛靭帯――。
とにかく念入りに、身体の各所を労わる。
(ん~~、スパイラルから入る、3連続のディフィカルト・ターン……。まだ、しっくりこない……)
問題はSPだけでは無い。
FSに於いては、5連続ディフィカルト・ターンを2回だなんて、他の選手からしたら正気の沙汰ではないだろう。
振付師の宮田は「ヴィヴィなら出来る」と豪語していたが、
実際に試合での評価を受けてみないと何とも言えないと、ヴィヴィは思っていた。
(難し過ぎて、エッジがフラットになって……。でもってレベル取れないとか、洒落にならない……orz)
「まあ、今 出来る事は……練習あるのみ……か」
そう、マットの上で一人ごち。
レギンスの上からぱちんと両太ももを叩いたヴィヴィは、そのまま勢い付けて立ち上がり、更衣室へと戻って行った。
「――で?」
23時。
約束通り、松濤国際SCの裏口に出た途端。
ヴィヴィを待ち構えていた男は、不機嫌な様子を露わにした。
デニムシャツに包まれた広い胸の前で両腕を組み、壁に凭れ掛かり。
20cmの身長差から睨み降ろしてくるのは、勿論 白砂 今(こん)――その人、で。
「説明してくれるかなあ? この状況を、さ」
黒縁眼鏡の奥の瞳が眇められているのは、絶対にヴィヴィのせいでは無いのに。
当惑する元生徒に、ずいっと上半身を寄せた白砂は、
「ヴィヴィ、何で “ここ” に “お・兄・様” がいるのか、教えてくれる?」
そう、不機嫌の理由を口にした。
「え……、えっと、私にも、何が何だか……?」
(な、何でここにいるの? っていうか、何で私が呑みに出ること、知ってるの?)