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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章     

 チェイサー(氷水)で痺れた舌を宥めながら、匠海の説明に耳を傾ければ、

 よく聞く洋酒の種類は、下記に分類されるらしい。

ウィスキーの仲間:大麦、ライ麦、トウモロコシなどの穀物から造った蒸留酒

 → スコッチ、バーボン

ブランデーの仲間:果実酒から造った蒸留酒

 → コニャック

「ヴィヴィが今 飲んだスコッチは、大麦麦芽が原料で、英国のスコットランドで造られたものだけが名乗れるんだぞ?」

 スコッチが双子の第二の故郷でもある英国産だと知り、ヴィヴィの瞳が輝く。

「あっ シャンパンが “フランスのシャンパーニュ地方” で醸造されたものしか、名乗れないのと一緒?」

 有名な例を挙げて問う妹に、兄は切れ長の瞳を細めて頷く。

「そうだ。ちなみに、そこの “長髪男” が呑んでるコニャックは、葡萄が原料で、フランスのコニャック市周辺で造られたものだけが名乗れる」

「へえ~~。知らなかった。面白い」

 ウィスキーを初めとする、大人の男が好みそうな蒸留酒は、大概 琥珀色で。

 自分には全く縁遠いものだと思っていた蒸留酒に、興味が湧いた。

 だが、えらく酷い扱いを受けた白砂が、黙っている筈も無く。

「ちょいちょい、お兄様……。 “長髪男” って誰の事です?」

「27歳にもなって、チャラチャラ髪縛ってる、誰かさんの事ですよ。うちの妹は、こう見えても “箱入り娘” なんでね? どこぞのチャラ男なんかに、引っ掛かったりしませんよ」

 ずいとカウンターに上半身を乗り出し、ヴィヴィ越しに睨んでくる相手を、匠海はへっと顎先であしらってしまう。

「お兄様……。 “人の恋路を邪魔する奴は 馬に蹴られてあの世行き” ……ですよ?」

 恨めし気に唸る白砂に、ヴィヴィは内心首を捻る。

(ん? 人の恋路……って?)

「あいにく、俺は乗馬を嗜んでましてね。馬の後ろに入ってはならない事くらい、常識ですよ」

 匠海の現在進行形の言い方に、ヴィヴィは今度こそ小さく首を捻る。

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