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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章     

 けれど、

 何だか自分を挟んで楽しそうにも見える男2人のやり取りに、ベリーニのグラスを傾け、呑みに徹することにした。
 
 何しろ、他にも沢山カクテルがあるのだから、この際 色々と試したくて。

「そういう事を言ってるんじゃないです。ヴィヴィは21歳だ。そろそろ男を知っても良い頃でしょう?」

「お……っ!? げほげほっ」

(お、男を知るって……っ ど、どストレートなっ!!)

 思わず咽てしまったヴィヴィは、手にしていた細いグラスをカウンターに置き。

 白砂から差し出されたおしぼりで口許を覆い、いつの間にやら匠海に背中を擦られていた。

 薄いシフォン生地越しに感じる暖かな感触に、途端に胸の奥がどくりと波打ったが、

 兄の大きな掌は呆気無いほど、すぐに離れて行って。

「………………」

 チェイサーで咽喉を潤す妹を横目に、兄は尚も続ける。

「ふ……。 “馬は土から” って ことわざをご存知ですか? 貴方が妹に相応しい男性かどうかは、俺が品定めしなくてはね?」

 1杯目を呑み終えたヴィヴィが、2杯目を注文する傍ら、白砂は「はっ」と鼻で嗤って匠海を一蹴していた。

「浅いなあ~~。そんなものは、ヴィヴィが実地で学べば良い事だ。 “可愛い子には旅をさせよ” と言うでしょう。良い男か悪い男か、自分で見極める力を付けないと、後々困るのはヴィヴィだ」

 目の前のカウンターでは、バーテンダーがミントシロップを作り、ライム丸々1個を絞っていて。

「ふん。その第一関門を俺が精査しているだけですよ。 “春出しの馬 押さえがきかず” の鼻息荒いどこぞの馬に、俺の可愛い妹が、みすみす奪われるのを見ている趣味はないんでね」


――――――
※馬は土から
良い馬をつくるには広い土地、良質の牧草地が何よりも良い基礎条件であること

※春出しの馬 押さえがきかず
冬の間小屋に閉じ込めていた馬が、春になり久しぶりの外に興奮して暴れ、どうにも抑えが利かなくなる様に、元気が良過ぎて抑えが利かず、衝動的になることをいう。

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