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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章     

 他には、ワイン、リキュール、ビール、焼酎、日本酒なんかもカクテル・ベースになるらしい。

 そのスタイルも、フローズン、フラッペ、ホット、トロピカルと多く。
 
 これら全てを網羅するのは、ちょっと大変そうだ。

 溢れかえるカクテルのネーミング。

 その中で、ヴィヴィの目を引いたものが1つあった。
 
 セックス・オン・ザ・ビーチ

 エロい名前のその印字を、懐かしさを込め指先でそっとなぞる。

(そういえば、随分前に、五十嵐に作って貰ったな……)

 『鞭』を与えられ始めた頃。

 兄の晩酌に付き合う際に執事が作ってくれたのは、ノンアルコールの セーフ・セックス・オン・ザ・ビーチ だった。

 匠海は「ベッドがいい」と嫌がったヴィヴィを、リビングで指でイカせ。

 そして、寝室で情熱的に抱いてくれた。



『ヴィクトリア、分かっているね――?

 次ぎ会う時まで、俺以外を、

 お前の気持ちいい “ここ” に入れちゃ、駄目だぞ?』



 留学中の一時帰国だった兄は、妹にそう言い置いて、また英国へ旅立ち。

 そしてその後から、双子の兄は片割れを避けるようになった。

「………………」

 小さな頭の中を、高校生の頃のクリス と 大学生の頃の匠海 が駆け巡っていた。

 それらに付随する感情は、悲しいかな負の色が濃くて。

 そして、自分の隣で呑気に酒を煽っているその人に苛立ち。

 残り半分となっていた、モヒートをストローを使わずそのまま飲み干したヴィヴィ。

「えっと……、ロングアイランド・アイスティー、下さい」

 こちらに背を向けていたバーテンダーに、次のオーダーを入れると、

 ベスト姿の30代半ばくらいの男のバーテンダーが、振り返って笑顔を浮かべ「畏まりました」と承った。

(どうして、来たんだろう……)

 白砂が同席するこの席で考えるなど、失礼に当たるとは解かっていながらも、ヴィヴィはその疑問を思い浮かべずにはいられなかった。

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