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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章
突如として、兄妹の間に訪れた沈黙。
先程の楽しげな雰囲気はどこへやら、
視線を落としたヴィヴィの瞳に、兄の長い脚を包む薄黄色のクロップド・パンツが映り。
「……何、で……?」
その問いは、やはり外聞を気にしてかドイツ語だった。
(どうして、ここにいるの……?)
肘辺りまで袖をたくし上げた、白いドッドの可愛い紺色のシャツ。
ただ、匠海が纏うと可愛らしさより、色気が際立つのが気に食わない。
袖から伸びた逞しい両腕が、カウンターの上に置かれていて。
「ヴィヴィが何時に戻るか確かめたら「呑みに行くようだから、午前様かもしれない」と聞いてね」
五十嵐か。
「……匠斗……」
妹の短い追及に、兄の笑みを含んだ声が答える。
「うん。松濤の家だよ。一緒にお風呂に入って来たから、今頃はマム達と寝てるんじゃないか?」
だからか。
隣に腰かけた匠海からは、爽やかなボディーソープが仄かに香って。
「……圧死、する……(-_-)」
血の繋がった甥の “生命の危機” を心配したヴィヴィに、匠海は「あははっ」と笑うだけだった。
「お兄さん、もう1軒行きましょうっ」
一時間弱して「ヴィヴィは明日も早いから帰す」と言い出した匠海に、白砂はハシゴ酒を強請ったが、
「御冗談を。男としっぽり飲む趣味趣向は、ありませんよ」
案の定な匠海の返しに、白砂は「きぃ~~っ」と悔しんでいた。
「失礼。ほら、ヴィヴィ、帰ろうね」
停めたタクシーに、妹を先に乗せようとする兄。
「えっと……。今先生、何か、色々とすみません」
一応責任を感じて、ぺこりと金の頭を下げたヴィヴィ。
「いいや。ヴィヴィは何も悪くないよ、ヴィヴィは、ね!」
悔しそうに匠海を睨む白砂に、ヴィヴィは「はは……」と乾いた笑いを漏らすしかない。
「凄く楽しかったです。誘って下さって、ありがとうございました!」
素直に感謝の言葉を述べて、にっこり微笑めば、
「ええと、ヴィヴィが楽しかったのは、バーテンダーとのJAZZ談義がだよね?」