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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章     

 まさか妹に叩かれるとは、思いもしなかったのだろう。
  
 匠海の手から滑り落ちたそれは、ベッドでワンバウンドして床に落ち。

 微かに届く、トクトクと中身が零れる音だけが、その場に落ちていた。

 その音が聞こえなくなった頃、

「……どう、して……?」

 自分でも、何故そんな言葉を口にしたのか解からなかった。

 ただ気が付いた時には、口をついて出ていて。

「もう、無理強いしたくない」

「え?」

 聞き間違いかと見返したヴィヴィの前、匠海はきっぱりと言い切った。

「ヴィクトリアが俺のことを「欲しい」と思ってくれるまでは、抱かないと決めた」

「……――っ」

 その時に覚えた感情を、一言で言い表すなら――怒り。

 目の前が一瞬にして真っ赤になったほど、ヴィヴィは憤怒していた。



 じゃあどうして、1週間前は抱いたのだ――?

 覚えている。

 自分は必死に懇願した。

『やめて、やめて下さい……。お願い……っ!』

 そう、何度も何度も。

 それでも捨てた筈の自分を強引に抱いたのは、匠海じゃないか。

 もう、無理強いしたくない?

 だったら、最初からこんな事、しなければ良かったのに!


 
 薄い夏用の羽毛布団を、掌の中に握り込む。



 放って置いたら自殺したから?

 あの時は、そうするしかなかったから?

 そんなの、自分の知ったことか。


 馬鹿にして――っ!

 毎日毎日、顔を見に来て。

 勝手にプレゼントを寄越し、

 気まぐれに、ディナーに誘ったりして。

 今日なんか、

 頼んでもいないのに、人のデートを邪魔して。


 捨てた女への未練を、あからさまに滲ませておきながら、

 その癖、妻子の居る日本に帰ってきてからは

 指一本触れるどころか、

 面と向かっては、愛の言葉も囁いては来ない。



『俺には “ヴィクトリア” にしか映らない』

『愛しているよ、ヴィクトリア』

『覚えておいで。お前だけが、俺を生かしも殺しも出来るんだ』



 あれも、

 これも、

 それも、

 また、嘘と出鱈目を並べ立てただけだったのか?

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