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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第5章
8月10日(木)――日本滞在5日目。
いつも通り5時に起床したヴィヴィ。
若干もさもさになった金色の頭のまま、白いベッドを這い出し。
正に「ぼぉ~~」という効果音の相応しい状態で、寝室を後にした。
バスルームで顔を洗えば、やっと頭がしゃっきりしてきて、
(今日は……ああ、午後から宮田先生が来て下さるって……。
あ゛……、今先生にもう一回、メールしておこう……)
後は、五十嵐に取り寄せて貰った書籍を読破して――と、
本日の優先事項を思い出しながら、歯ブラシにペーストを付けようとし。
「………………」
歯ブラシをぽいと、白いタオルの上に放ったヴィヴィ。
作り付けの棚からある物を取り出すと、そのままリビングへと、白い室内履きを纏った脚を向ける。
小さな冷蔵庫から取り出したのは、ミネラルウォーターの入ったペットボトル。
ガラスのコップの3分目まで注ぎ、シルバーのシートを掴んだ、その時。
ノックも無しにガチャリと音を立て開かれた扉を、ヴィヴィは緩慢な動作で振り返った。
「ヴィヴィ、おはよう」
「………………」
左隣の部屋から顔を覗かせたのは、当たり前だが上の兄で。
(何で、こんな朝早く、に……)
無言で見つめるだけの妹に対し、戸口に立ったまま入って来ない兄は、気遣わしげな表情を浮かべていた。
「身体、大丈夫かと思ってね」
言葉を発するのが面倒で、思わず頷いてやり過ごそうとしたヴィヴィだったが。
頷く = どういう意味に取られる?
そう疑問になり、しぶしぶ口を開く。
「……心配、無い……」
ふいと視線を外し、コップの水を飲む妹に、
「アルコールは?」
まだヴィヴィの酒飲み遺伝子の有無を測りかねる様子の兄は、そちらも心配なようで。
「……問題、無い……」
全くいつもと変わり無いヴィヴィは、手短に答える。
「そうか。じゃあ、気を付けて行っておいで」
安堵した声と共に、静かに扉を閉めて消えた匠海。