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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第5章
若干 肩を落としつつ、メイドに向かって手を伸ばす。
「こんにちは、瞳子さん。沖縄は如何ですか?」
なるべく自然に見える微笑を浮かべながら、画面の向こうの義姉に挨拶すれば、
『まあ、ヴィヴィちゃん! 相変わらずの美少女ね~♡ 沖縄は天候は勿論、仕事のほうも順調よ。ありがとう』
屈託の無い笑顔を寄越す瞳子からは、国家プロジェクトに携わる喜びと充実感が伝わって来る。
「良かったです。お帰りは月曜ですか?」
『ええ、そうなの。ヴィヴィちゃんは土曜に渡英しちゃうのよねえ?』
ちょうど入れ替わりとなる事に、義姉は本当に残念そうな表情を浮かべていた。
一方のヴィヴィはと言えば、特に何も感じなくて。
「フラワーバス、ありがとうございました」
数日前、瞳子からプレゼントされた “夜来香(イエライシャン)” のフラワーバスのお礼を口にする。
メールではお礼を伝えていたのだが、ちゃんと面と向かっても言わなければと思っていた。
『いえいえ。確かお母様と一緒に入ったのよね?』
ゆるゆると頭を振る瞳子の黒髪は、相変わらず豊かで美しくて。
「はい。マム、あの香り、気に入ったみたいです」
『まあ、良かった。ヴィヴィちゃんは、そうねえ。もっと大人しめの香りのほうが、好きそうね?』
ずばりと本音を見破られ、ヴィヴィは若干焦った。
「え? あ、そう、かも知れませんね」
そう言葉を濁すヴィヴィに、瞳子が何かを思い付いたように にっこりする。
『例えば、 ラ・レーヌ・ヴィクトリア とか?』
「え……?」
挙げられた薔薇の名に、ヴィヴィはきょとんとするが、
『ふふ、うちにも植えてあるのよ? 篠宮のお宅から株分けして頂いたの』
「……そう、だったんですか」