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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第5章    

 ラ・レーヌ・ヴィクトリア

 自分と同じ名前のそれ。

 ヴィヴィが生まれたその年からずっと、ロンドンの父の生家も、エディンバラの母の生家も、そして松濤の屋敷にも、

 それぞれ同じ株から生まれた薔薇が、ずっと受け継がれ、育てられてきた。

『ええ、匠海さんが「どうしてもと」持って行きたがってね?』

「………………」

(何で、そんな事……?)

 匠海のその不可思議な行動に、ヴィヴィの顔から微笑が剥がれ落ちる。



『俺、数ある薔薇の中でも、これの香りが一番気に入ってるから』



 ああ、そうだった。

 瞬時に思い出した兄の言葉にヴィヴィは納得し「そうですか」と答えるに留めた。 

『そうそう、沖縄のお土産は何がいいかしらね?』

 話を変えてくれた相手に、

「え? いいですいいですっ この前も、プレゼント貰ったばかりで……。わ、私なんて、英国土産すら忘れた薄情者ですもん……orz」

 「なんてダメな義妹なんだろう」と項垂れるヴィヴィに、

『いいえ、お母様から大量に頂いたわ。ふふ、私も英国に行っていたのにね?』

「そ、それは……そうですねえ」

 何とも言えない表情を浮かべるヴィヴィに、瞳子はくすくすと可笑しげだった。

『ああ、そうだわ。昨日、無添加手作りのナマコ石鹸を見つけたの。私も使ってみて凄く良かったから、オックスフォードに送っておくわね?』

「え? あ、ありがとうございます。それは本当に、助かります」

 まさかの朗報に、ヴィヴィは ぱっと表情を改め、喰い付いた。

 が――

『え? “助かる” ?』

「あ、何でもないです……」

 不思議そうに首を傾げる瞳子に「長々すみませんでした、匠斗に変わりますね」と、ヴィヴィは五十嵐にタブレットを譲った。

 五十嵐が画面の中の瞳子を、匠斗に見せれば、

「まんま~」

と、先ほどと同じテンションで、画面に向かって手を伸ばしていた。

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