この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第5章
「………………」
(昨日の今日で、もっと、罪悪感とか感じると思ったけど……。なあんも感じなかったな……)
そりゃあそうか。
今の自分にとっての匠海は、ただの性欲解消の道具も同じ。
道具の持ち主に罪悪感なんて、感じる訳が無い。
電話が切れ、その後も匠斗は五十嵐に絵本の続きを強請り。
五十嵐にも「まんま」
ミルクにも「まんま」
「まんま」以外の言葉を発しない甥を、ヴィヴィはまるで未確認生物を観察するかの如く、ガン見していた。
あんなにちっこいのに、良く動くこと。
(まあ、圧死しなくて、良かった……)
そんな不吉な事を思っていると、
「抱っこなさいますか?」
あまりに熱心に、けれど距離を保って匠斗を見つめているヴィヴィに、五十嵐が尋ねてくれる。
「……いい……」
そういえば、自分は防音室に行こうとしていたのだった。
当初の予定を思い出し、立ち上がろうとしたヴィヴィ。
しかしその視線の先に、革のバインダーに挟まれた紙を見つけ。
つい興味本位に取り上げれば、それはどうやら、いつも甥の面倒を見ている瞳子付きのメイドから預かったらしい、タイムスケジュールだった。
(ふうん、どれどれ……?)
~7:00 ねんね
7:00~ 離乳食・ミルク
8:30~ ねんね
9:30~ おやつ・遊び
12:00~ 離乳食
14:00~ お散歩
15:00~ おやつ
15:30~ ねんね・遊び
18:00~ 離乳食
19:00~ お風呂
20:00~ ミルク
21:00~ ねんね ※まれにぐずります
「………………」
匠斗の一日を紙に起こしたそれに、ヴィヴィはぽかんとしてしまった。
(ねんね か 何か食べてるか……)
まだ11ヶ月の幼児の一日を、ヴィヴィはほんの少しだけ羨ましく感じ。
手にしていたそれを、テーブルへと戻す。
カツオ君とワカメちゃんは、凄いんだな。
タラちゃんの叔父と叔母なんだもんね。
小学生なのに――。
自分なんて、もう21歳にもなるのに、
叔母として甥を可愛がる事すら、出来ないだなんて。