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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第5章    

「………………」

(昨日の今日で、もっと、罪悪感とか感じると思ったけど……。なあんも感じなかったな……)

 そりゃあそうか。

 今の自分にとっての匠海は、ただの性欲解消の道具も同じ。

 道具の持ち主に罪悪感なんて、感じる訳が無い。

 電話が切れ、その後も匠斗は五十嵐に絵本の続きを強請り。

 五十嵐にも「まんま」

 ミルクにも「まんま」
 
 「まんま」以外の言葉を発しない甥を、ヴィヴィはまるで未確認生物を観察するかの如く、ガン見していた。

 あんなにちっこいのに、良く動くこと。

(まあ、圧死しなくて、良かった……)

 そんな不吉な事を思っていると、

「抱っこなさいますか?」

 あまりに熱心に、けれど距離を保って匠斗を見つめているヴィヴィに、五十嵐が尋ねてくれる。

「……いい……」

 そういえば、自分は防音室に行こうとしていたのだった。

 当初の予定を思い出し、立ち上がろうとしたヴィヴィ。

 しかしその視線の先に、革のバインダーに挟まれた紙を見つけ。

 つい興味本位に取り上げれば、それはどうやら、いつも甥の面倒を見ている瞳子付きのメイドから預かったらしい、タイムスケジュールだった。

(ふうん、どれどれ……?)


~7:00  ねんね

7:00~  離乳食・ミルク

8:30~  ねんね 

9:30~  おやつ・遊び

12:00~ 離乳食

14:00~ お散歩

15:00~ おやつ

15:30~ ねんね・遊び

18:00~ 離乳食

19:00~ お風呂

20:00~ ミルク

21:00~ ねんね ※まれにぐずります


「………………」

 匠斗の一日を紙に起こしたそれに、ヴィヴィはぽかんとしてしまった。

(ねんね か 何か食べてるか……)

 まだ11ヶ月の幼児の一日を、ヴィヴィはほんの少しだけ羨ましく感じ。

 手にしていたそれを、テーブルへと戻す。


 カツオ君とワカメちゃんは、凄いんだな。

 タラちゃんの叔父と叔母なんだもんね。

 小学生なのに――。

 自分なんて、もう21歳にもなるのに、

 叔母として甥を可愛がる事すら、出来ないだなんて。


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