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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第5章

15時には松濤のリンクへと、戻ったヴィヴィ。
甥っ子に感じた恐怖はさて置き、3時間みっちり陸上で身体を鍛え。
そして、今シーズンのFSの振付を依頼した宮田を招き、プログラムのチェックをして貰っていた。
2023―2024シーズンのプログラムは、下記の通り。
【SP】Por una cabeza
作曲:カルロス・ガルデル
振付:アントニオ・ナハロ
【FS】カルミナ・ブラーナ
作曲:カール・オルフ
振付:宮田 賢二
自身初となる “歌詞を含む楽曲” を使うFSに、ヴィヴィはどっぷりのめり込んでいた。
2014―2015シーズンより、
男女シングル、ペアで用いられる音楽は、アイスダンス同様、ボーカル入りがOKとなっている。
それでも、これまで試合用プログラムで、歌詞入りの音源を使わなかった理由は、
歌詞の言語が解るジャッジと解らないジャッジとの間で、己が表現している事への評価が、異なってしまう可能性があると思っていたから。
しかしヴィヴィが選んだ『カルミナ・ブラーナ』は、超が付くほどの有名なカンタータ(オーケストラ付きの声楽曲)で、その歌詞も広く世に知られていた。
(まあ、私が滑るのラテン語だし? ほとんどのジャッジ、解んないだろうしね……。というか、私だって分かんないも~~ん)
宮田と一緒に、料理長お手製のディナーを採り終え、付属のカフェテリアで少し休憩し。
また振付のブラッシュアップを再開する為、エッジカバーを外したヴィヴィは、リンクへと入って行く。
愛用のポータブルプレイヤーを携えながら、宮田は気になったところを何度も繰り返し、ヴィヴィに滑らせてみては修正を加えていく。
「ちょっと待った……。違う、ヴィヴィ。いいかい?」
「え? はい」
前半2分を滑り終わったところで止めた宮田は、慎重にヴィヴィに言い含めてくる。
「ヴィヴィは “運命に振り回される人間” でもあり、この世を司る “運命の女神” をも演じるんだよ?」

