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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第5章    

 白石のマントルピースの上に置かれた時計が、その長針と短針を重ねる頃。

 ヴィヴィは私室のリビングで、1冊の分厚い本を手にしていた。

 今日の昼、速読を駆使し、既に読み終わったそれ。

 なのにまた、ぺろりぺろりと指に吸い付くページを捲りながらも、意識は他のところにあった。

 たまに微かな物音が、左側の部屋から漏れ聞こえていた。

 否――

 愛車で屋敷の門を潜った時には既に、3階の部屋に煌々と明かりが灯されているのに気付いていた。
 
 しかし もう5分間も、ヴィヴィは白革のソファーに座り込んだまま。

 バスも使い、歯も磨き、後は寝るだけだというのに。

「………………」


 ヤルならとっととヤレば良い。


 匠海が隣にいるというだけで、自分の躰は盛った雌猫の如く、兄との性行為を心待ちにしている。

 昨夜、実の兄を性欲処理の道具として欲した妹を、匠海は受け入れていたではないか。

 ならば、それと同じ事を今夜もすればいいだけで。

 けれど、そう思うのに、

 “何か” が自分の中でつっかえて、その場に足踏みをさせていた。

 金色の前髪の下、当惑の表情が見え隠れする。


 “何か” って、何――?

 お兄ちゃんを連日 求めたら、付け上がらせてしまいそうだから?

 それとも「今日は嫌だ」と、拒否されたら恥ずかしいから?

 はたまた、

 今朝、ピル服用の事実を、お兄ちゃんに知られてしまったから?


 思い付く限りの理由を、小さな頭の中に列挙してみるが、

 どれもどうしてか シックリ来なくて。
 
 そんな時、ふと脳裏に過ったのは、数時間前に振付師に言われた言葉。



『でも、今のヴィヴィでは 前半も後半も、 

 “運命に振り回される人間” を滑っているように見えてしまう』



 読みもしない書籍のページを繰っていた手が、とうとう止まる。

 今の自分は、匠海を振り回して愉しんでいるつもり だけれど、

 実際のところは、どうなのだろうか――?

 それもこれも、兄の計算通りで。

 自分はまた、あの男のシナリオに、踊らされているだけなのだろうか?

 
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