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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第5章    


 無駄に長い その脚で。

 無駄に逞しい その躰で。

 そして、

 無駄に整った その顔で。


 誘ったのは自分。

 これから主導権を握るのも自分。

 なのに、

 柔らかな薄水色のナイトウェアに包まれた胸の内は、

 期待と不安、

 そして気負いによって、鼓動を速めていた。

「ヴィクトリア……。俺は嬉しいよ? お前に求めて貰えて……。けれど――」

 どこからどう見ても、この状況を滅茶苦茶 悦んでいる癖に。

 今更そんな事をほざいてくる匠海に、ヴィヴィの大きな瞳は完全に据わった。

「五月蠅い」

 嬉しいなら、黙って抱かれていればいいだろうに。

「ヴィクトリア、せめて前戯ぐらいは俺にさせてくれ。じゃないと、苦しいのはお前ばかりだろう?」

 昨夜、匠海の言う通り、苦しい思いをしたヴィヴィだったが、

「私に触れた時点で辞める」

 そこだけは絶対に譲らなかった。

「だが……」

 目の前で立ち尽くす匠海に、ヴィヴィはきしりと微かにスプリングを軋ませながら立ち上がる。

「ぐだぐだ言わないで。お兄ちゃんは私の下で、喘いでればいいの」

 妹のまさかの発言に、

「お、お前……。そういうのは男のセリフであって……」

 すぐさま訂正を入れようとした兄を、妹は茶色のバスローブの合わせを掴み上げて黙らせる。

 微かに背伸びをし、薄い唇を押し当てたのは、白い肌に張り出した咽喉仏。

 唇に感じるコリコリした感触にそそられ、ヴィヴィは丹念にそこを舐め始めた。

「……ッ ……ふ……」

 舌先でチロチロされるとくすぐったいのか、両腕に触れた匠海の胸が微かに震えていて。

 思わず ちゅうと吸い付きそうになったヴィヴィ。

 けれど「それだけはしてはならない」と思い留まり。

 代わりに舌全体を使って、出っ張りを擦り上げるようにすれば、

「……ぁ……っ はぁ」

 少しは色気を含んだ吐息が、少し大きめの唇から漏れ始めた。

 何だか兄を征服 出来た気がして。 

 声を発するたびに上下するそこを、執拗に辿っていれば。

 顎を上げていた匠海が、熱い吐息を吐きながら横へと顔を反らした。

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