この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第5章
8月11日(金)――日本滞在6日目。
夜は20時を回る頃。
篠宮邸のダイニングは平日の夜にも関わらず、珍しく賑やかだった。
父・グレコリーに 母・ジュリアン、そしてヴィヴィ。
料理長が腕によりをかけた和食懐石を囲みながら、末娘との最後のディナーを楽しんでいた。
夏の白身として重宝されるメイタガレイに、肉厚で甘い石垣貝。
天然鮎の塩焼きは、内臓の苦みの中にも甘みと香りを感じ、
(あ~……、和食はやっぱりいいなぁ~……)
しみじみ そう噛み締めていると、
「やあ、お待たせ。遅れてごめん」
息子を抱っこした匠海が、15分遅れでダイニングに姿を現した。
「ああ、ちょうど匠斗のお風呂の時間だったもんな。ほら、グランパのところにおいで~♡」
デレッデレの様相を呈したグレコリーは、立ち上がって初孫を受け取りに行く。
「はぁ、暑かった」
父に息子を託し、ヴィヴィの目の前の席に腰を下ろした長男は、
五十嵐が用意したビールを、ごくごくと咽喉を鳴らしながら、旨そうに飲み干した。
色素の薄い肌に浮き彫りになる、ごりごりとした硬いもの。
それを じいと見つめていたヴィヴィ。
「ん?」
妹の視線に気付いた兄の問いに、金色の頭がゆるゆると横に揺れる。
「五十嵐、やっぱり、私も呑もうかな」
傍に控える執事を呼び、用意出来るアルコールの中から選んだのは、スパークリング日本酒。
辛口のそれは、刺身をはじめとする和食とも合い、
けれどアルコール度数はシャンパンよりも若干高く、炭酸も手伝い、酔いが回るのが早い気がした。
「あら~。匠斗も “おめかし” してるのね? ん~~♡ カッコいいでちゅね~♡」
ジュリアンの声に惹かれ視線をやると
白黒ギンガムチェックに黒ネクタイ、黒ジャケット(を着ている風に見える)ロンパース姿の匠斗は、とんでもなく愛らしかった。
そして、ペアルックを意識したのか。
白黒ギンガムチェックの五分袖シャツに、白の細ニットタイをラフに結った匠海も、何だか可愛くて。