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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第5章
(やっぱり、匠斗……。嫌い、になれない……。だって、赤ちゃん……だもん……)
自分は子供好きな方だと思う。
匠斗は兄の子で、
自分とも1/4とはいえ、血の繋がりがあって。
「………………」
白瓜の昆布〆を、もそもそ咀嚼するヴィヴィは、
だからと言って、どうやって甥と向き合って行けば良いか、見当が付かず。
とりあえず、目の前のフルートグラスに注がれた日本酒をあおった。
「ここにクリスも、いればねえ~」
残念そうに肩を落とすジュリアンを、
「まあまあ、どうせすぐに会えるじゃないか」
グレコリーはそう慰めた、が。
「え……?」
思わず疑問の声を上げたヴィヴィを、母は「ふふん」と笑いながら見返してくる。
「Twinkle ICE、観に行くに決まってるでしょ!」
「あ、ああ……」
そう言われればそうかと、曖昧に頷けば、
「それに今年は、ジャパンオープン も NHK杯 も出るでしょう?」
ジュリアンのその確認に、
「……う、ん……」
ヴィヴィはまた、浅く頷く。
昨シーズンは、全日本選手権 と 国別対抗戦 にしか、日本開催の試合にエントリーしなかった。
それに比べ今シーズンは、名の上がった4試合に出ることになっている。
もちろん、ヴィヴィの希望では無く、
『お願いだから、もっと日本の試合に出てちょうだい。ヴィヴィは日本のスケ連所属なんだからね?』
そう、スケ連幹部に言われて、仕方なく。
「日英で遠く離れていても、あんた達が頑張ってる姿は、毎日送られてくる動画でも見られるし。こうやって会う機会も持てるから、私達は幸せね~。まあ、それでもやっぱり、淋しいけれど」
匠斗にミルクを与えながら、にこにこと続けたジュリアン。
そして、
「若いうちから色んな世界を見るのは、必ず自分の糧になる。10月から大学が始まって大変だろうが、頑張りなさい、ヴィヴィ」
珍しく(?)真面目な激励の言葉をくれたグレコリー。
「はい、ダッド」
椅子の上で背筋を伸ばしたヴィヴィは、素直に頷いた。