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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第1章  

 玄関ホールで泣いていた主を、執事は手近な接客室へと導いてくれた。

「そっかあ~~。じゃあ “黒ヴィヴィ様” は封印だね?」

 涙を拭いながら、そう尋ねてくるカレンに、

「……はい……?」

 問いの意味が解りかねるヴィヴィは、茶器を取り上げながらも ぽかんとして問い返す。

「知らないの? ヴィヴィったら、昨シーズン、黒髪にしてたし。SPもFSもエキシビも、全部黒の衣装だったでしょう? で、全然にこりともしないから、周りのスケオタは「黒ヴィヴィ様、萌え~♡」って騒いでたんだよ?」

 ちなみにカレンは幼少の頃からクリスLOVEだったので、自然とスケオタ(スケートおたく)になったのだ。

「も、萌え……?」

 確かに、昨シーズンは黒衣装しか着なったし、黒髪だったが。

 それのどこに “萌える” 要素があるというのだろうか――?

「うん。まさに「ツンデレの極みっ!」てね~。ヴィヴィ笑わなかったけれど、インタビューには誠心誠意 答えてるのが伝わってきたからねえ」

「は、はあ……」

(ツ、ツンデレ……? う~~ん……。ツンツンはしてたけど、デレた覚えは1つもないぞ……)

 いまいち納得のいかないヴィヴィは、とりあえず落ち着こうと薫り高い紅茶を飲み下す。

「ん……? あれ? でも、私……。そんなにインタビュー、真面目に答えてなかったよ?」

 ヴィヴィは心底不思議そうに、金の頭をひねる。

 渡英直前のごたごたで、日本のマスコミに嫌気がさしていたヴィヴィは、

 昨シーズン、フィギュアに関する事以外は、取材等に非協力的だった気がする。

「ああ、あれね? 『冬眠中ですから』って」

「う、うん……」

 ヴィヴィは昨シーズン、各社の記者にプライベートな事や、答えたくない質問をされた時はいつも、

『冬眠中ですから』

 と、怒られてもおかしくない決め台詞で切り抜けていた。

 もう正直、どれだけ日本中に叩かれようが、「成人したくせに、受け答えがなってない」と罵られようが、どうでも良くなっていたのだ。

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