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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第1章
「あれ、日本では最初はみんな驚いてたけど、逆に楽しみ始めてたみたい。ヴィヴィ、自分でも感じなかった?」
カレンの説明に、ヴィヴィは斜め上に視線を彷徨わし、
「え……と。あ~~、そう言われてみれば……」
確かに、そう言われれば思い当たる節がいくつかあった。
昨シーズンが終了する頃には、ヴィヴィがその決め台詞を口にすると、周りの記者たちが笑っていた気がする。
てっきり呆れられているのだと思って放置していたが、まさかまさか、面白がられていたとは――。
戸惑った様子のヴィヴィに、親友は長い腕を伸ばし、その頭をなでなでしてくる。
「ふふ。ヴィヴィはね~、周りから愛される素養を、たっくさん持ってるんだよ? だから、みんなヴィヴィに構いたくなっちゃうし、ヴィヴィの事を根掘り葉掘り、何でも知りたくなっちゃうの」
「え……?」
思い掛けない言葉に、カレンの柔らかな掌の下、ヴィヴィは微かに瞳を見張る。
「だから……まあ、当人からしたら面倒臭いかもしれないけれど。みんなヴィヴィが好きなだけなんだから、ある程度は許してあげてよね~?」
「カレン……」
スケートが大好きなカレンのその言葉は、自分を応援してくれる沢山のフィギュア・ファンの言葉にも思えてきて。
素直に こくりと頷こうとしたヴィヴィに対し、
「だって、ヴィヴィったら超面白いんだもん! 一日中 行動観察してても飽きないし、あははっ」
両手でヴィヴィの髪をグシャグシャ撫でたカレンは、心底面白そうに笑っていた。
「~~~っ!? 私は珍獣かってのっ!」
ぼさぼさの頭で、そう突っ込んだヴィヴィ。
BST時代、
『学園のアイドルは、ヴィヴィでしょ……?』
そう不服そうだったクリスに、
『ヴィヴィ? ん~、ヴィヴィはアイドルじゃなくて、マスコット的な?』
『ゆるキャラ的な?』
『みんなのおもちゃ的な?』
クラスメイト達は、そう言っておちょくっていた。
どんなに年を取ろうが、幼馴染み達にとっての自分は、永遠にそういう人物像でいられるらしく。
その事に微妙な心持ちと、何故か安堵を覚えたヴィヴィなのだった。