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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第5章
明日、自分は英国へ向かって旅立つ。
戻ったら、第一優先でショーン・ニックスの指導を仰ぎ。
クリスと陸上・氷上で、タンゴの研鑽を積み。
10月から始まる大学の準備もしないとだし、
ロンドンの祖母と約束した通り、庭の青虫退治にも励まなければ。
(そして、グランマのトマトも食べるの……)
他にも色々と自分を待っている事柄を、金色の頭の中で思い浮かべていると、
「そういえば、ヴィヴィ。昨日、匠斗に、指差されて怯えたんだって?」
本鮪をつまみに、冷酒を飲み始めた匠海の指摘に、
「ん? 匠海、どういうこと?」
疑問の声を上げた母に、長男は手短に昨日起こった珍事を説明した。
「それの何が怖いんだい、ヴィヴィ?」
父の不思議そうな視線を受け、
「だ、だって、赤ちゃんとかペットとか “視える” って言うじゃない~~っ」
昨日の甥の様子を思い出したヴィヴィは、ぞっとし。
自分の肩と背中に “いる筈の無いモノ” を、手でパパッと祓った。
「あはは、それで怖がってたの? 馬鹿ねえ~~?」
大笑いするジュリアンに、
「可愛いなあ、ヴィヴィは♡ 昔っから “怖がりさん” で」
相好を崩して愛娘を見つめるグレコリー。
「お化け屋敷の半径50mに近寄ることさえ、出来なかったもんな?」
にやにやと追い打ちをかける匠海。
「ふんだ。私は怖がりなんじゃなくて “危機察知能力が高い” だけですぅ~」
3人総出で面白がられ、ヴィヴィは薄い唇をツンと尖らせ、負け惜しみを口にしておいた。
「あはは、そうだよな~。ほらヴィヴィ、おいで。抱っこしてあげよう♡」
両腕をこちらへと伸ばしてくる父に、娘は げんなりした表情を浮かべる。
「……結構です……」
赤子の匠斗と同じ扱いを受けるのは、そろそろ遠慮したい。
自分はもう21歳の成人なのだから。