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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第5章
「うぇえ~~っ!? な、なんでぇ……?」
若干 怯えながら、大きな瞳で皆の顔を見渡すヴィヴィに、
「そうよぉ~、なんでよぉ~~っ! 「グランマ」でも「グランパ」でもなく、何でまだ数回しか会った事無い「ヴィヴィ」なのよぉ?」
ジュリアンは不満たらたらで。
「俺だってまだ「パパ」って言われてないのに……」
匠海まで、そんな事を言い出す始末。
「し、知らないよぉ……」
両親と兄に じと目で睨まれてしまったヴィヴィは、しどろもどろで言い返す。
(そんなの、私が教えて欲しいよ……。何でよりによって、私なのさ?)
甥をあやしたり、面倒を見たり。
そういう事を一切して来なかったのに、どうして匠斗は自分を――?
しかし、
「び~び~……び~び~……」
次いで匠斗の唇から放たれたのは、そんな響きで。
「……警報?」
「ビービー弾?」
娘と息子の呈した案に、
「長渕 剛の『ろくなもんじゃねえ』じゃないか?」
父がクソ真面目な顔で呟いてきて。
「あははっ」
「長淵って、どんだけ渋い赤ちゃん!」
日本に疎いジュリアン以外は、皆 吹き出して爆笑していた。
席から立ち上がった匠海は、キョトンとするジュリアンの腕から、息子を受け取り、
「まだ幼児だから、Victoriaの “V” の発音が出来ないんだよな~? 匠斗♡」
両脇の下に大きな掌を差し込み、ぶらぶらさせて息子をあやす匠海は、心底嬉しそうで。
小さな掌でぺたぺた父親の顔に触れる匠斗は、きゃっきゃとはしゃいでいて。
そんな父子の様子を、ヴィヴィは静かな面持ちで見つめていた。
今から15日前――。
オックスフォードの屋敷で、初めて匠斗を目にした。
その時の自分は、千々に心乱れ、匠海の血を引いた子を前に、項垂れるしかなかった。
けれど、
今の自分は不思議と、幸福な兄の姿を見ても、狼狽える事は無かった。
それどころか、良かったと素直に思えた。
――――――
※長渕 剛『ろくなもんじゃねえ』
サビが ♪びぃびぃびぃ~ びぃびぃびぃ~♪ なんですな~。