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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第5章    

「……私、明日、帰るんですけど……」

 細い眉をハの字にして続けたヴィヴィ。

 こんなに立派で見目麗しい花束。

 今夜と明日の朝しか愛でて貰えないなんて、勿体無いし薔薇が可哀そう。

 しかし、口ではそう言いながらも、華奢な身体はもじもじし始めていた。

 だって、やっぱり嬉しいのだ。

 言動と心情が矛盾しているのは、百も承知。

 火照り始めた頬を見られるのが恥ずかしくて、若干 俯きがちになったヴィヴィ。

 しかし、

 幸せだったのはそこまでだった。

「まあ、そう言わず貰ってくれ。 “夜来香” と書いて “イエライシャン” と読むらしい。素敵だろう?」

 柔らかな声音で告げられた兄の言葉に、俯いていた小さな顔がふっと持ち上がり。

「……え……?」

 聞き覚えのある花の名前に、ヴィヴィの全てが強張った。

 “夜来香(イエライシャン)”

 それは、5日前、

 義姉から頂いた黄色の花と、同じ名前で。

(……私に贈る花……、どれがいいか、尋ねたの……?)

 そう思った瞬間、全身の肌という肌が ざっと粟立った。

 瞳子は草月流の師範代で、新進気鋭のフラワーアーティスト。

 確かに “花のプロ中のプロ” だろうけれども。

 だからと言って、こんな事――。

「……~~っ」

 薄水色のスカートから伸びた細長い脚が、くるりと踵を返し、

 そして向かった先、

 ヴィヴィは胸に抱いていた花束に、躊躇なく片手を突っ込んだ。
 
 ブチ、ブチッ。

 無残な音を立て引き千切られた藤色のそれは、細い掌の中からハラハラと零れ落ち。

 白いバスタブの中、張られた温めの湯へと降り注ぐ。

(どうして!?

 どうして、こんな無神経なこと、出来るの……?

 もう、信じらんないっ)

 元恋人で、実妹で、

 これから愛人にしようと、企んでいる相手。
 
 そんな女に贈る花を選ぶ事さえ “妻の役目” だというのか?

 ぐしゃりと顔を歪め、嫉妬と憤怒に身体を震わし、

 気がふれた様に、贈り物の薔薇を無茶苦茶にする妹。
 
 その姿は兄から見ても、目も当てられないほど醜く映ったらしい。

「待て――。辞めなさい」

 硬い声で蛮行を止めさせた匠海は、ヴィヴィの腕から藤色の花束を奪い取ってしまった。

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