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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第5章
「ダンスを踊らせてみれば、薔薇の精の如き鮮やかに舞い、
ピアノを弾かせてみれば、砂糖菓子の如き甘い音色を奏でます」
「……ドリーマー……」
若干 呆れ気味で半眼になったヴィヴィにも、匠海は挫ける事も無く。
「オジサンは いよいよ少女に首ったけになり、日々 希(こいねが)います。
「ああ、どうか。ずっとずっと、私の傍に居ておくれ」と――」
「………………」
「しかしオジサンは、諸事情で他の女性と一緒にならざるを得ませんでした。
けれど少女は、いつも愛らしく微笑みます。
いつも可憐な仕草で、オジサンを惹き付けます」
「………………」
最早、表情を無くしたヴィヴィに構わず、匠海は夢物語を無意味に垂れ流し続ける。
「サクランボの唇で啄ばみ、
マシュマロのお尻で跳ね、
蜂蜜でトロトロになったお口で、
オジサンをも、トロトロに熔かし尽くしてしまいます」
そう囁く切れ長の瞳の奥は耽溺し、底無しに濁っていて。
「だから、オジサンは少女の誘惑に抗えず――」
気が付けば、目の前の大きめの唇を、掌で覆っていた。
微かに震える白い指先を、力を込めて誤魔化す。
何故だか、その先を聴いては、
もう元には戻れない気がして――。
細い背筋に悪寒を覚えながらも、
「五月蠅いっ」
そう、兄を一喝した妹。
「もごもご」
まだ何かを言いたそうにしている匠海に、
大きな瞳を眇めたヴィヴィは最終宣告を下した。
「辞めたくないなら、もう、黙って。 “お遊び” はここまでよ――」
昨シーズンのFS『LULU』をなぞったかの様な昔話に、反吐が出そうだった。
口を塞いだ掌の上、切れ長の瞳を瞬かせながら こくこく首肯する兄から、手を退ければ、
鼻も押さえていたので息苦しかったのか、はあはあ息を切らしていた。
ややあってから、広い肩を竦め、
「ふぅ。あれもダメこれもダメ……。ヴィクトリアは我が儘な子だねえ」
そう零してきた匠海を、
「……ふんだ」
不貞腐れて退けたヴィヴィ。