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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章
「……ごめん……」
咄嗟に謝罪した妹に、双子の兄は金の髪を靡かせながら、首を横に振って見せる。
「ほら、入っといでよ~!」
先に部屋に入ったダリルに呼ばれ、元クリスの部屋に足を踏み入れれば。
「わあ……。素敵……」
広いワンルームのそこに、ヴィヴィは感嘆の声を上げた。
元と同じく、家具は白を基調としたものが揃えられてはいたが、新調してくれていて。
以前は、百合の紋章が入っていた水色の清楚な壁紙は、今はライラックピンクのそれになっていた。
クッションや寝具、カーテン等のファブリックも白一色ではなく、
ライラックピンクがアクセントとして、センス良く配されていて。
そして――
「あ……」
窓際に飾られた花瓶を目にした途端、ヴィヴィはすっ飛んで行き、
「これ……?」
フルーティーで爽やかな甘さを振りまく薔薇を、指先で摘まみながら振り返る。
「菊子様からの贈り物です」
いつの間にか戸口に佇んでいた朝比奈の言葉に、小さな頭がゆっくりと頷く。
「そう、グランマから……。嬉しいな、ふふ。綺麗……」
ラ・レーヌ・ヴィクトリア。
それは、産まれた頃から常に自分の傍らにあった、ライラックピンクの薔薇。
「ロンドンのオーウェン邸から、株分けして頂きました」
父の生家から株分けして貰ったという事は、
「え? じゃあこの屋敷にも?」
「ええ。裏庭に」
にっこりと微笑む朝比奈に、ヴィヴィは灰色の瞳を極限まで細めた。
自分が生まれたその年からずっと、ロンドンの父の生家も、エディンバラの母の生家も、そして松濤の屋敷にも、
それぞれ同じ株から生まれたこの薔薇が、ずっと受け継がれ育てられてきた。
そして今や、このオックスフォードの屋敷と、
何故か、白金台にある匠海夫婦の屋敷にも――。
「やん、素敵ぃ~♡ ねえ、クリスぅ。私達の結婚記念日に、ダリルの名前を付けた薔薇、贈ってほしいナ?」
クリスの長い腕に掴まり、ぶらんぶらんしながらおねだりする同居人に、
「誰と誰が、結婚するって……?」
からかい過ぎたのか、さすがに呆れ始めているクリス。