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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第1章  

 カモメ眉毛が特徴の自分より4歳上のその人は、人好きする笑顔を浮かべながらも、何故かヴィヴィのことを根掘り葉掘り尋ねてきた。

「ヴィヴィ、今年からオックスフォードに通うんだって?」

「あ、うん。10月からね。2年生になるんだ~」

 やっと根無し草のような自分から抜け出し、腰を据えて生活出来る喜びに、発する声も明るかった。

「日本に残してきた彼氏、寂しがってるんじゃない?」

「え……? 彼氏? なんて、いないけど……?」

 ちょうど到着したエレベーターに、導かれて乗り込んだヴィヴィは、不思議そうに25歳のその人を見上げる。

「そうなんだ? イギリスにも?」

「うん。てか、私みたいなの、英国でも本当にモテないし」

 英国人は日本人に比べて身体の発育が良い――つまり、そういう事だ。

「ふうん。最近、ヴィヴィに色気が出てきたのは、彼氏が出来たせいかと思ってた」

 少し訛りのある英語で続けたネイサンは、乗り込んだ箱の目的階へのボタンを押して振り向いた。

「……へ……?」

(い、色気……? 私に?)

 言われ慣れない単語に、ヴィヴィは大きな瞳をぱちぱちと瞬かせる。

「双子プログラムのタンゴ、凄くいい。SPもタンゴを滑るんだって?」

 そう続けたネイサンに、ヴィヴィは心の中で納得する。

(ああ、 “氷の上での色気” ね。まあ、それは、確かに無いと困るっていうか……)

 エレベーターが到着階に着き、2人は連れだって歩き出す。

「うん。実は昨年、ずっとタンゴ習ってたんだ。私、大学も休学してたから、超暇人だったし~」

 指で組んだ両腕を胸前に伸ばしながら、ヴィヴィはおどけてそう返した。

 ホテルの1室に到着し、ネイサンが骨ばった指でカードキーを差し込み、中へ向かって扉を押し開いてくれた。

「どうぞ。アルフレッドが、ベッドの上にイラッくまを放置してきたらしいよ?」

「おじゃましま~す。……あ、ほんとだ。うつ伏せてる、可愛い」

 ツインルームのそこは、自分が泊まっている部屋と全く同じで。

 躊躇無く入室したヴィヴィは、ベッドの上のイラッくまをだっこし。

 次の瞬間、何故かベッドの上に転がっていた。

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