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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章     

「……ございません……」

 やんわり否定の言葉を述べたクリスの腕に、自分のそれを絡ませた円は、

「あははっ じゃあ、みんな、オヤスミ~」

 笑いながら皆と挨拶を交わし、

「あ、お兄ちゃん。ヴィヴィに手、出さないでよ?」

 クリスに引っ付いていないほうの腕の先、びしりと太一を指差した円。

「はぁ……、出さないよ。ヴィヴィちゃんは僕の “妹も同然” なんだからね」

 毎度 同じ様な苦言を受ける太一は、広い肩を竦めて見せた。

 しかし、無言のまま がん見してくるクリスの様子に気付くと、

「ええと、本当だから。クリス君、信じてくれるかな?」

 心底困った表情を浮かべる太一に、皆が堪えられなくなって笑い出し。

「すみません……。ほら、マドカ行こう……」

 クリスに促され、円は宛がわれている2階の客室へと戻って行った。

 朝比奈がキッチンに食器等を下げに行くのに、ダリルも立ち上がる。

「あ、アタシも手伝う~❤」

「ありがとうございます、ダリル様」

 松濤の篠宮の屋敷でそんな事をしようなら、朝比奈が咎められそうだが。

 このオックスフォードの屋敷は双子の意向もあり、気が付いた者は、1人で何役も熟さねばならぬ執事の手伝いを買って出ていた。

「ねえ、アレ、美味しかったわ~。レシピ教えてくれない?」

 賑やかにキッチンへと消えていく2人。

 そうすると当たり前だが、だだっ広いダイニング・リビング・サンルームのスペースには、太一とヴィヴィだけが取り残されて。

「あの……。数日前、聞いたんです」

 おもむろに静かな声音で話し掛けたヴィヴィに、太一は不思議そうに「ん?」と尋ねてきた。

「えっと、マドカから、その……。今のご両親とは、い、遺伝的に親子、じゃないって……」

 スカートの裾を弄りながら、しどろもどろのヴィヴィに対し、

「ああ。そうだったんだ」

 そう答えた太一は、凄くあっけらかんとしていた。

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