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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章
「じゃ、じゃあ、また明日」
くるりと踵を返したヴィヴィ。
一刻も早くホテルに戻って、暖かな湯に浸かって、もう眠ってしまいたかった。
けれど、
「ヴィヴィ」
そう呼び止められたら、無視する訳にはいかず。
「………………?」
恐る恐る振り返った先、
「おやすみ。ごめんね、無理やり……」
柔らかそうな金髪の下、申し訳無さ気に眉を顰め、謝罪してきたデニスに、
「ううん。おやすみなさい」
ヴィヴィは何とか作り笑顔を浮かべ、今度こそ皆の元へと駆けて行った。
Title:お疲れ様でした
Letter:
2日間のロンドン公演 お疲れ様。
日本でもニュースで取り上げられてるよ。
明日は移動日か。
エディンバラを観光したりするのかな。
お前達が幼い頃は、皆で市内の旧跡を巡ったりしたけれど、
最近はご無沙汰だったね。
良い休暇と休息を。
ホテルに戻って一息付いて。
その時になってやっと気付いた、匠海からのメール。
もう2時間も前に送られて来ていたそれに、思わず返信のボタンを押そうとした。
その時、
「ヴィヴィ~、バス使う~?」
同室のアイス・ダンサー、ペニー・クルムス(英国・34)に声を掛けられたヴィヴィは、ぱっと顔を上げ。
微笑みながら自分を見つめている大先輩に、ぷるぷると金の頭を横に振る。
「ペニー、先に使って? 私、ちょっとお茶飲んで、ゆっくりする」
大きな瞳を細めながらそう促せば、ペニーは「分かったわ~」と笑って、バスルームへと消えて行った。
「…………はぁ」
大きなため息を ひとつ吐き。
上げていた顔を降ろした視線の先、スマホに開いていたメールを、さっさと削除してしまう。
(返信なんかして、どうするの?
今までずっと無視してきたのに。
自分が辛い時だけ、お兄ちゃんに頼るつもり……?)
そう心の中で自分を戒め、その元凶ともなったスマホを、ベッドの上へと放る。
自分の荷物を漁ったヴィヴィは、朝比奈が持たせてくれたハーブティーのティーバックを取出し、
ポットの湯を注いだ、ホテルのカップに浸す。