この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章
「うん……。そうして疫病が流行すると、地下には伝染病患者が隔離されて。薄暗い部屋の中、もがき苦しみながら人知れず息絶えていった……。そんな死者の亡霊達が、夜な夜な辺りを徘徊――」
「ぐぁああああ~~っ」
細い声で、断末魔の如き叫び声を上げるヴィヴィに、
「ヴィヴィ、ホラー苦手なの?」
そう訊ねてきたのは、昨夜 迷惑を掛けてしまったデニス・ヴァシリエフス(ラトビア・25)で。
ヴィヴィは金の頭をぶんぶん振って首肯する。
「はは。もう涙目じゃないか。はい、ティッシュ」
差し出されたポケットティッシュを、礼を言って一枚貰った。
「あ、ありがと……。うぅ……今日、寝れない……(´;ω;`)」
怖がりの癖に怪談話に興味津々で、初等部の頃から執事の朝比奈に迷惑を掛け続けたヴィヴィ。
きっと今夜は、頭の中にお化けが沢山出てきて、怖くて寝付けないことだろう。
「あらまあ。じゃあ、私がヴィヴィの枕元で、面白い話を聴かせてあげるわ」
同室のペニー・クームス(34)の言葉に「ほ、ほんと?」と藁にも縋る思いで飛びついたが、
「ええ。先月、ロンドンのホラーツアーで “ハイゲート墓地” 行ったから。そこで起こったポルターガイストについて、事細かに話してあげるわねえ~」
にたあと怖い顔で嗤うペニーに、
「ふぎゃあああ~~っ!!」
ヴィヴィは今日一番の雄叫びを上げ。
「「「ヴィヴィ、五月蠅いっ!!!」」」
そう皆に怒られたのだった。
ランチでは、この地方特産のファイン湖産のカキや、新鮮な魚介類に歓声が上がり。
また、スコットランドの郷土料理 “ハギス” の濃厚な味付けに、皆がビールを追加注文していた。
―――――
※ハギス:羊の肉・内臓・血等をオート麦やタマネギ等の野菜、香辛料と共に調理し、羊の胃袋に詰めて加熱したソーセージ状のもの