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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章     

 自分の席へと戻ったヴィヴィは、何となく気掛かりだったバックの中のスマホを、ちらりと確認した。

「………………」

 30件もの未読メールが溜まっていたものの、そこに “想定していた人物” から発信されたものは無く。

 さっとスマホを仕舞い、手付かずだった料理の数々にフォークを伸ばす。

 呑んでばかりなので、何か胃に食べ物を入れないと――なのだが。

 口に放り込んだフランス料理も、ただ機械的に咀嚼されるだけで、全然 味など感じ取れなかった。

 見目鮮やかな盛り付けを、ぼんやりと見下ろしていた灰色の瞳が、徐々に曇っていく。


 匠海は今朝 日本を発ち、ロンドン経由でエディンバラ入りし。

 母が言う事には、ショーの会場にも居たらしい。

 けれど、妹の自分と顔を合わす事も無く。

 何の連絡も寄越さず、

 エディンバラの夜の街へ、姿をくらませてしまった。

(……美女に、声でも掛けられたのかな……)

 兄好みの英国美人に誘惑され、そのまま夜の繁華街へと出掛けたのかも知れない。

 その時になって、ヴィヴィは己の大きな思い違いに、やっと気付いた。


 
 私……。

 勘違い……してた。

 瞳子さん、だけ……じゃ、ないんだ。

 お兄ちゃんの お眼鏡に適う素敵な女性は、

 世界各国に、沢山いて。

 もちろん、

 お兄ちゃんは、あれだけの美男子で……。

 ED……じゃ、ない、し……。
 
 言わば、

 世界中の美少女と美女が “ライバル”――

 って……、

 別に……、

 私は、

 もう……。



 いつの間にか俯いていた、緩く巻いた金の頭。

 すっと顔を上げたヴィヴィは、目の間にあるフルートグラスを摘まみ、

 ごくごくと細い咽喉を鳴らせ、中のシャンパンを飲み干した。

「いいねえ、イケる口だねえ~、お嬢さん~❤」

 隣の席のローレン・レカヴェリエ(フランス・25)が、スケーターにしては豊満な胸を揺らせ、ヴィヴィにお酌してくれて。

「あ、ありがとう~♡ お返し~♡」

 互いに継ぎ合いながら、結構なハイペースで飲む2人。

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