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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章     

「飲み過ぎだよ、ヴィヴィ……」

 そう窘めてくる双子の兄に、妹は何故か胡乱な瞳を向ける。

(いやいや。クリスも飲ませたじゃんかぁ……「ホストなんだから、飲まないとね……?」とか、よく分かんない事言って……。まあ、いいけど~♡)

「うふふ。たくさん飲んらのら~」

 もうべろんべろんのヴィヴィの頭の中からは、自身を蝕んでいた “性欲” は吹き飛んでいた。

“とにかく、(牛乳)飲む! 走り込む!! 泳ぎまくるっ!!!”
 
 上記の欲求不満・解消法に、
 
“それでも駄目なら、深酒する!!!!”
 
 を、付け加えておこうと、酔っぱらいながらも心に刻む。

 エレベーターが到着し、クリスに支えられながら、自分へと宛がわれている部屋へと戻ったヴィヴィ。

「ヴィヴィ、カードキー……」

 そう促され、バックの中を「鍵さん鍵さん、出ておいれぇ~」と変な歌を口ずさみながら漁り。

 見つけたカードキーを、クリスへ渡そうとすると、

「ク~リ~スぅ~? なあに、ほれ~?」

 白いカード状の物に目を落としている双子の兄に気付き、そう尋ねた。

「ん、何でもない……」

 カードキーを預かったクリスは、扉を開けて中へ妹を導いた。

「ありゃ? ペニーは?」

 同室の英国アイス・ダンサー、ペニー・クームス(34)の姿が見えなくて。

「ん。ペニーは、近くの友人宅で、朝まで飲み明かすって……」

「ふうん。ふわわわ……」

 掌をかざしたその下、大きな口を開け、盛大な欠伸を零すヴィヴィ。

「ほら。もう着替えて、寝ちゃおうね……」

「え~~、お風呂、入るのら~」

 唇を尖らせて、言う事を聞かないヴィヴィに、

「危ないよ……」

 クリスは心配そうで。

「酒臭いのやら~~っ」

 それでなくても大量に飲酒したので、自分に纏わりついている匂いにも、寝ている間に酔いそうだった。

「じゃあ、身体をシャワーで流すだけ、ね……?」

 妥協案を呈するクリスに、ヴィヴィは「ふわぁ~~い」と了承し、ゆらゆらとバスルームへ消えて行った。

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