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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章      

 どこの世界に、五体満足なのに 兄に “お姫様抱っこ” され、レストランに行く妹がいるというのだ?

 可愛くない態度を取り続けるヴィヴィに対し、

 リビングからルームサービスのメニュー表を取って戻った匠海は、その胸の中に妹を抱き込んだ。

「これは? ん~、これも美味しそうだ」

 一緒にメニューを覗き込み、至極ご満悦な匠海。

「ち、近いっ 顔近いっ」

 自分のほっぺに、後ろから頬を寄せられて(今更)慌てる妹に、

「ふっ 照れ屋なヴィクトリア、可愛い。ちゅ」

 白く滑らかな頬に、リップ音付きのキスを落とす兄。

「ふぎゃあっ!?」

 足腰立たない割に、口は元気なヴィヴィは、

 その後も匠海にからかわれながら、何とかメニューを選んだのだった。





「それだけで本当に足りるのか?」

 兄がそう言って視線を寄越したのは、妹が唯一オーダーした、

 秋野菜のテリーヌ と ミネストローネスープ だった。

「ショーの後、連日 打ち上げとかで……。正直、カロリーオーバー気味なの」

 それに、手付かずのウェルカムフルーツがこんもりあったので、それで充分だった。

「なるほど。でも、ほら、1口……」

 差し出されたスプーンに乗せられた 牛頬肉の煮込みに、

 「色気より食い気」と素直に口を開いたヴィヴィ。

「うむ……美味である……」

 文句無く柔らかくて、凝縮された濃厚な旨みに満足していると、

 「もう1口」と差し出されたスプーンには、首を振って断った。

「何で美味しいものって、カロリー高いんだろう?」

 何で美味しそうな男って、リスク高いんだろう?

「ワインは?」

 赤ワインのグラスを持ち上げながら、問うてくる兄に、

「……やめておく」

 昨夜の泥酔を思い出した妹は、一瞬苦虫を噛み潰した表情を浮かべ。

 結局、美酒の誘いも断ったのだった。



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