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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章      

 ウェルカムフルーツも食べて満足した頃には、まだ若干震えが残っているとはいえ、足腰が言う事を利くようになり。

 自分の脚で、バスルームへ歯磨きしに行ったヴィヴィ。

 戻って来たかと思えば、まだ食事途中の匠海の傍へと己の椅子を寄せ、ぴったりとくっ付く。

「ああ、甘えん坊さんだ」

 珍しく愛らしい態度を取る妹に、幸せそうな兄が腰を抱き寄せてきた。

 空になったグラスに赤ワインを注ぎ直す、

 その無駄を削ぎ落とした所作に見惚れ。

 黒いグラスの柄を摘まむ長い指先の優雅さに、直情的に想ってしまう。

 またこの指で、自分の奥深くまで満たして欲しいと――、

「………………」

 細い指先が向かったのは、男らしく張り出したもの。

 そこに中指の腹を触れ合わせれば、

 兄が何かを摂取する度に、ごりごりと波打って。
 
 横からぺろりと舐め上げれば、

 「くすぐったいよ」と少年の様に笑われて。



 もう、なんか……、

 もう……ほんと……いいや……。



 ワインのあての干しイチジクを、大きめの口に放り込む横顔に、

「ねえ」

 そう短く呼べば。

「うん?」

 咀嚼しながらこちらを見下ろす灰色の瞳と、視線がかち合う。

 無表情のまま、真っ直ぐ兄を見据えた妹は、

 何でも無い事の様に言い放った。

「私のセフレにしてあげる」

 目の前の切れ長の瞳が、一瞬 見開かれたかと思うと、

「……――っ ごほっ げほっ」

 何故か盛大に噎せ始めた匠海に、若干呆れ顔のヴィヴィは、テーブルに置かれたナプキンを手渡した。

「ごほっ お前――っ ゴホっ み、水……っ」

 何か言い掛けたのに、苦しそうにミネラルウォーターのグラスに手を伸ばした兄。

 そんな相手に、妹は内心首を捻っていた。

 何をそんなに、焦って驚く必要があるのか――? と。 



 どうせ、年に数回しか顔を合わせないのだ。

 その数回の内、幾度か躰を重ねるくらいならば、

 互いの私生活に、支障を来たさないのでは無いか?
 
 そうすれば、義姉にはバレないだろうし、
 
 きっと、

 兄妹の過去を知るクリスや朝比奈にだって、気付かれない筈。


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