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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章      

 ヴィヴィなりに、悩んで出した決断を、

「嫌だ」

 あっさりと切り捨てた匠海。

 まさかの返事に一瞬、長い睫毛に縁取られた瞳が固まってしまったが、

「……あっそ。じゃあ、THE END」

 両手を肩の高さまでオーバーに挙げたヴィヴィが “終わり” を宣言した。

 「交渉決裂したのなら、こんな場所に用は無い」と、椅子から腰を上げるも、

 バスローブから覗く細い手首は、いとも簡単に匠海に掴まれてしまった。

「馬鹿。「セフレなんかでは嫌だ」っていう意味だっ」

 そう説明しながら見上げてくる兄の表情は、怒っている様にも見える、引き攣ったものだったが、

「だって、それ以上は「私が嫌」なんだもの」

 一方のヴィヴィは、無表情のまま飄々と返すのみ。

 というのも、ヴィヴィの頭の中では、下記の順位が存在していた。


不 倫
 ↑
 ↑
セックスフレンド
 ↑
 ↑← 今ここ
性欲処理の玩具


 ちなみに “性欲処理の玩具” と “セックスフレンド” の違いは、

 前者が、どちらか一方が求める 性欲処理の相手

 後者が、両者が求める 性欲処理の相手

 ――と、ヴィヴィは勝手に思っている。

 今の “性欲処理の玩具” の状況から “セックスフレンド” を飛び越え、

 その先の “不倫” 関係になるのは嫌だと突っぱねた妹に、

 兄はというと、意外にも黙り込んでしまって。

「………………」

 口を噤まざるを得なかった妹は、その代り、細い息を唇から吐き出した。



 何をそんなに難しく考える必要がある?

 まさか今更、

 「瞳子と匠斗に悪いから」とか言うつもり?

 だとしたら、私、

 ヘソで茶、沸かすけど?



 片方の手首を捕らわれたまま手持無沙汰のヴィヴィは、仕方が無く また椅子に腰を下ろし。

 自然と瞳が向かってしまう逞しいそこへと、自由な方の手を伸ばす。

 皮膚越しに感じる軟骨の形を辿り、

 横から見える男性特有の魅惑的なラインを、指先でなぞるも。

 無反応の匠海に、少し物足りなくなって。

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