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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章      

「嘘吐き」

 まるで拗ねた声音で、短く妹を詰る兄に、

「……わ、私が欲しいのは、お兄ちゃんの、躰……だけ……」

 最早 色を失くした紙の如き顔色で、ヴィヴィは弱々しく否定する。



 心なんて、いらない。

 どうせすぐ裏切られるなら、

 心を貰えたと “ぬか喜び” なんて、

 もう、絶対にしたくない。



「ヴィクトリア……」

 若干の失望を滲ませる匠海にも、両手を捕われたままのヴィヴィは、為す術無く。

 先程までの強がった態度からは一変し、腰抜け状態で椅子にへたり込んでいた。

「分かったよ……。今はそれでもいい。でも今夜は、もっと俺を求めて、ヴィクトリア」

 咽喉仏へと宛がわれていた片手を、ゆっくりと剥がされ、
 
 その指先を、大きめの唇で食ままれ。

 口に含まれてしまえば、敏感な指先に感じた、熱くぬめった舌の感触。

「………………っ」

 ぞくりと背筋を駆け上った、悪寒と紙一重の 愉悦の予感。

 大きな灰色の瞳に、一瞬 煌めいた情欲のしるしを、

 今の匠海が、見逃してくれる筈も無かった――。







 軽々とベッドへ運ばれたかと思えば、

 今や正体を失くしたヴィヴィに、匠海は至極丁寧に舌での愛撫を施し。

 躰を繋げてからは、深く激しく求めてきた。

 あまりの攻めに、何度も意識をやりそうになったヴィヴィ。

 けれど、

 妹が頑なに拒む “唇への口付け” だけは、

 兄は絶対に、無理強いしないでいてくれたのだ。






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