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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章
良心が咎めたヴィヴィは、一応 所在を知らせるメール送っておいた。
Title:(無題)
Letter:
もう、オックスフォード。
バイバイ。
20歳で渡英してから、1年5ヶ月。
一度もこちらからは連絡を取った事は無く。
なのに、
ようやく 自分の愛する男に送ったメールは、
そんな味も素っ気も無い、簡素なものだったのだ。
屋敷に戻ったヴィヴィは、軽く仮眠を取り。
ランチまでの時間は、速読を駆使し、ライブラリーで読書の虫となっていた。
「お嬢様、お昼の用意が整いましたよ」
12時に呼びに来てくれた朝比奈に、
分厚い専門書から上げた小さな顔には、嬉しそうな表情が宿っていた。
「和食? 和食?」
天井まで届く書棚に本を戻し、嬉しそうに寄って来る主に、
「ええ。お嬢様のお好きな、ミョウガの浅漬け も アオサのお味噌汁 もございますよ?」
曇り一つ無い銀縁眼鏡の奥、瞳を細めた執事。
「やった~!」
手離しで喜ぶヴィヴィは、すたこらサッサとダイニングへと向かったのだった。
クリスと一緒にランチを摂り。
半端無く眠そうな双子の兄と別れ、ヴィヴィは防音室へと脚を向ける。
ここ7日間。
TWIの為にオックスフォードを離れており、楽器に触れる事が出来なかった。
ここはひとつ、自由時間の2時間全てを、楽器練習に充てようと心に決めた。
その時。
ワンピのポケットに入れていたスマホが、振動し始めた。
まさかと思い、スマホを取り出せば。
着信相手は、匠海だった。
「……なん、で……?」
防音室の扉の前、脚を止めたヴィヴィは、
振動し続けるスマホを見下ろしながら、動けないでいた。
出ないに越したことは無い事は、重々承知だった。
自分と兄が繋がる事は、必ずどこかにひずみを生じさせ、
決まって誰かを不幸にする。
「………………」
やがて、出る気が無いのを悟ったのか、着信は切れて。
もう諦めてくれただろうと、スマホをポケットに戻そうとするも。
今度は聞きなれたメロディーが、廊下に微かに響いた。
(嘘……。今度は、メール……? もう、一体なんなの?)