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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章
細い指先を滑らせ、届いたばかりのメールを開封すれば。
Title:オックスフォードに着いた
Letter:
一目でも良いから会いたい。
頼むから、電話に出て。
「~~~っ!?」
驚愕の事実を伝える内容に、大きな瞳が更に大きく真ん丸になる。
(ス……ススス、ストーカーですやんっ!?)
あまりの事に取り乱し過ぎ、思わず関西弁で突っ込んだヴィヴィ。
そうこうしていると、またスマホが振動し始めて。
このまま無視出来る程、冷たい子じゃないヴィヴィは、目の前の防音室の扉を開け。
確実に密閉してから、不承不承 電話に出るしかなかった。
『良かった。出てくれて……』
「………………」
てっきり、第一声で物凄く怒られると思っていたのに。
意外にも匠海の声は、妹の安否を確かめられた事に、心から安堵しているそれに聞こえた。
しかし、
兄が次に発した言葉に、目の前が真っ暗になった。
『今、屋敷の目の前にいる』
「……冗……談……」
くしゃりと前髪を握ったヴィヴィは脱力し、分厚い扉に凭れ掛かった。
確かに、オックスフォード駅からも、バスの停留所からも、この屋敷はそんなに離れてはいないが。
だからと言って、屋敷の目の前から電話を寄越すなんて、
幾らなんでも、脅迫じみていやしないだろうか?
『ヴィクトリア、出て来られないか? 近くでお茶でも飲もう』
お茶?
お茶なんかして、どうしようと言うのだ?
それに匠海との交渉は決裂した。
今更、ヴィヴィには話す事など、何も無い。
「……無理……。悪いけど、もう帰って……」
(そしてお願いだから、もう二度と、私に連絡して来ないで……)
わざわざオックスフォードくんだりまで、多忙な兄に脚を運ばせてしまった事は、
ヴィヴィにも、その責任の一端はあるかもしれない。
けれど、もう匠海には会えなかった。
否――
自分達は “普通の兄妹” として接せられるようになるまでは、
もう会ってはならないのだ。